国内EC市場27.6兆円、物販+3.97%とサービス+8.64%の差

2026.10.28
国内EC市場27.6兆円、物販+3.97%とサービス+8.64%の差

EC物販は「落ち着いた」と言われますが、その説明は半分しか当たっていません。2025年の国内BtoC-EC市場は27兆5,580億円で、前年から5.5%増えました。物販系だけでも、前年から約6,000億円積み上がっています。それでも、伸び率でも増加額でもサービス系が物販を上回ったのは事実です。経産省が2026年10月21日に公表した最新データから、「物販の落ち着き」と「サービスの伸び」の実像を整理します。

2025年の国内EC市場は、結局いくらまで広がったのか?

2025年の国内EC市場は、結局いくらまで広がったのか?

結論から言うと、2025年の国内BtoC-EC市場は27兆5,580億円、前年比5.5%増です。物販系・サービス系・デジタル系の3分野すべてが前年を上回りました。

27.6兆円は3つの分野でできている

市場規模は、モノを買う「物販系」、予約や購入といった「サービス系」、配信などの「デジタル系」に分けて集計されます。まず全体像を表で見てみましょう。

分野 2025年の市場規模 前年比 全体に占める割合
物販系 15兆8,233億円 +3.97% 約57%
サービス系 8兆9,362億円 +8.64% 約32%
デジタル系 2兆7,985億円 +4.52% 約10%

※市場規模と前年比は経産省の公表値です。割合は筆者が計算しました(四捨五入)。 

物販系が5割を超える構図は変わりません。ところが、「どれだけ増えたか」に目を移すと景色が少し変わってきます。この記事の出発点はここです。

2019年と比べると、何が変わったのか?

コロナ前の2019年と比べると、全体は約1.4倍です。物販系は約1.6倍、サービス系は約1.25倍にとどまります。2019年は物販系が10兆515億円、サービス系が7兆1,672億円、総計が19兆3,690億円でした。

分野 2019年 2025年 倍率(筆者計算)
物販系 10兆515億円 15兆8,233億円 約1.57倍
サービス系 7兆1,672億円 8兆9,362億円 約1.25倍
全体 19兆3,690億円 27兆5,580億円 約1.42倍

6年間で増えた約8.2兆円のうち、約7割は物販系が占めます。物販が「落ち着いた」のは、勢いが消えたからではありません。大きな階段を一度のぼりきったあと、歩幅が落ち着いただけなのです。

物販は本当に「落ち着いた」と言えるのか?

物販は本当に「落ち着いた」と言えるのか?

多くの場合、「物販は頭打ち」と受け取られがちですが、実際は毎年数千億円ずつ積み上がっています。落ち着いたのは伸び率であり、市場の大きさではありません。

伸び率は2020年の21.7%から3〜4%台へ

物販系の前年比を並べると、減速の形がよく見えます。

年 物販系の前年比 市場規模
2020年 +21.71% 12兆2,333億円
2021年 +8.61% 13兆2,865億円
2022年 +5.37% 13兆9,997億円
2023年 +4.83% 14兆6,760億円
2024年 +3.70% 15兆2,194億円
2025年 +3.97% 15兆8,233億円

※2020年は前年比21.71%増、2021年は8.61%増、2022年は5.37%増、2023年は4.83%増、2024年は3.70%増、2025年は3.97%増でした。 

注目したいのは、2025年が2024年よりわずかに高いことです。減速が止まり、3〜4%台の安定成長に入ったと読めるでしょう。1年あたりの増加額は、2025年で約6,000億円です。

EC化率の横ばいが示す、本当の「落ち着き」

物販の落ち着きを数字で一番よく表すのは、EC化率です。EC化率とは、すべての商取引のうちECで行われた割合のことです。2025年の物販系BtoCのEC化率は9.80%でした。2024年は9.78%でした。差はわずか0.02ポイントです。

計算上、これは「ECの伸び」と「商取引全体の伸び」がほぼ同じ速さだったことを意味します。ECが実店舗のシェアを奪う局面から、両者が並んで歩く局面へ。筆者はそう見ています。実店舗に戻る動きがあったのか、そもそも全体が伸びたのか。今回の公表資料だけでは、原因までは断定できません。

サービス系ECは、なぜここまで伸びたのか?

サービス系ECは、なぜここまで伸びたのか?

ポイントは3つ。コロナ禍で落ち込んだ反動、旅行・飲食・金融の回復、そして予約や購入をネットで済ませる習慣です。前の2つは公表データで確認でき、3つ目は筆者の見立てになります。

2020年の落ち込みから、5年連続の拡大

サービス系は、コロナ禍でいったん大きく縮みました。2020年は前年比36.05%減の4兆5,832億円です。その後は2021年に4兆6,424億円へ戻り、2025年の8兆9,362億円まで5年連続で前年を上回っています。旅行サービス・飲食サービス・金融サービスが、大きく回復したと報告されています。 

旅行サービスの存在感は特に大きいところです。2024年の旅行サービスは3兆5,249億円で、同年のサービス系全体(8兆2,256億円)の4割強にあたります。

実は、サービス系の伸び率も鈍化している

見落とされがちですが、サービス系の伸び率も年々小さくなっています。

年 サービス系の前年比
2022年 +32.43%
2023年 +22.27%
2024年 +9.43%
2025年 +8.64%

※2022年は32.43%増、2023年は22.27%増、2024年は9.43%増、2025年は8.64%増です。

つまり「サービスが物販を追い抜く勢いで伸びている」とまでは言えません。落ち込みからの回復という追い風が弱まり、2019年比で約1.25倍の水準で落ち着きつつある、というのが実像でしょう。それでも、2025年の増加額は物販を上回りました。サービス系の増加額は約7,100億円で、物販系の約6,000億円より多いのです(筆者計算)。

物販のなかで、どのカテゴリーが伸びているのか?

物販のなかで、どのカテゴリーが伸びているのか?

結論として、最大は食品・飲料・酒類の3兆3,332億円です。上位4分野の合計は、物販系EC市場の74%を占めます。

上位4分野の規模と、ECへの定着度

カテゴリー 2025年の市場規模 前年比 EC化率
食品、飲料、酒類 3兆3,332億円 +6.96% —
衣類・服装雑貨等 2兆8,941億円 — —
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 2兆8,829億円 +5.05% 43.08%
生活雑貨、家具、インテリア 2兆6,258億円 — 31.73%

※市場規模・前年比・EC化率の出典は経産省の公表値です。「—」は今回確認できた資料に記載がなかった項目で、推測では埋めていません。 

食品は前年比+6.96%、家電・PC関連は+5.05%で、どちらも物販系の平均(+3.97%)を上回っています。一方で、衣類や生活雑貨の前年比は確認できていません。ですから「物販は一様に鈍化した」とまとめるのは、数字に対して乱暴だと言えます。

ECに定着した分野と、伸びしろの残る分野

EC化率が高いのは、書籍・映像・音楽ソフトが57.93%、家電・PC関連が43.08%、生活雑貨・家具・インテリアが31.73%です。物販系全体の9.80%と比べると、分野ごとにECの浸透度がまったく違うことが分かります。

筆者の見方を添えるなら、写真で買う商品ほど、ページの出来が売上に直結します。家具やインテリアは大きさ・質感・色味を画面越しに判断してもらう商材で、写真の説得力がそのまま成約に響きやすい分野です。まだ店舗で買う人が多い分野ほど、ECで「実物の代わり」を担うのは写真だ、ということです。

この構造変化は、物販EC事業者に何をもたらすのか?

この構造変化は、物販EC事業者に何をもたらすのか?

ポイントは3つ。市場の追い風だけでは売上が伸びにくいこと、競争が商品ページの質に出やすいこと、そしてモノとコトの境目が薄れていることです。

市場が年約4%伸びる中で、売上が横ばいなら

物販ECの市場は、2025年に+3.97%伸びました。自社のEC売上がこれと同じペースなら、市場の中での立ち位置は変わりません。横ばいなら、シェアは実質的に下がっています。「去年と同じ売上だから安心」とは言いにくい局面なのです。

競争が「商品ページの質」に出やすくなる理由

追い風が弱まると、買い手は同じ条件で複数のショップを見比べます。実物に触れないECでは、写真が商品の代わりに語るしかありません。光の当て方で質感が変わり、角度が一つ違うだけでサイズ感の伝わり方が変わります。こうした差は、広告費で一時的に埋めることも難しいところです。

「モノ」と「コト」の境目は薄くなっている

サービス系が伸びたからといって、物販が不要になるわけではありません。旅行の荷物、外食の手土産、イベントのための服。体験の周りには、必ず買い物があります。商品を「スペック」ではなく「使う場面」で見せられるかどうか。ここが、ただ並べるだけのページとの分かれ目になっていくでしょう。

自社ECの「落ち着き」を見極めるには、何を確認すればよいのか?

自社ECの「落ち着き」を見極めるには、何を確認すればよいのか?

意外かもしれませんが、売上の増減だけを見ても原因は分かりません。市場平均と見比べ、数字の内訳まで分けて点検すると、手を打つ場所がはっきりします。

7項目の点検チェックリスト

確認項目 具体的な見方
売上の前年比 物販系の市場平均(+3.97%)と比べて上か下か
新規とリピートの比率 どちらが伸び悩んでいるかを分けて見る
客単価の推移 値上げ後も維持できているか
自社カテゴリーの位置 EC化率が高い分野か、伸びしろの残る分野か
商品ページの写真 枚数、使用シーンのカット、サイズ感が分かる写真の有無
返品・問い合わせの理由 「イメージと違った」が多くないか
新商品の掲載スピード 入荷から撮影・掲載までの日数

上の5〜7番目は、撮影の現場の目線で外せない項目です。写真の不足は、問い合わせや返品という形で後から表に出てきます。

迷ったときの判断フロー

次の順に答えていくと、優先順位がつけやすくなります(一般的な整理です)。

  • Q1:自社の売上成長率は、市場平均(約4%)を下回っているか? 下回っている場合はQ2へ。上回っている場合は、いまの施策を維持しつつ客単価を点検します。
  • Q2:アクセスは増えているのに、購入率が下がっていないか? 下がっている場合は、商品ページ(写真・説明)の見直しが最優先です。アクセス自体が減っている場合は、広告・SEO・SNSなど集客から見直します。
  • Q3:客単価が下がっていないか? 下がっている場合は、セット提案や使用シーンの見せ方で価値を伝え直します。維持できている場合は、リピート施策に進みます。

統計を読むときに、見落としやすい注意点は何か?

統計を読むときに、見落としやすい注意点は何か?

多くの場合、数字は「正しく引用された」だけで安心されがちですが、定義を取り違えると結論が変わってしまいます。次の3点は、記事や社内資料に使う前に必ず確認してください。

EC化率は「物販系」だけの数字

経産省の調査では、令和5年度からEC化率の対象を物販系分野に限定しています。サービス系やデジタル系にはEC化率の概念が当てはまりません。「EC市場全体のEC化率」といった表現は避けましょう。

市場規模は推計値で、金額ベース

調査の市場規模は推計値です。しかも金額で集計されるため、価格の変動が含まれます。「金額が増えた」ことと「売れた数が増えた」ことは別の話です。年をまたいで比べるときは、同じ調査年度の報告書で確かめるのが安全でしょう。

数字は一次情報で確認する

経産省は2026年10月21日に「令和7年度電子商取引に関する市場調査」を公表しました。解説記事によって、前年の数字や分野の分類が混ざることがあります。引用の前に、経産省の報告書本文で確かめるクセをつけておくと確実です。

数字の裏で差がつく「商品写真」は、どこで整えればよいのか?

数字の裏で差がつく「商品写真」は、どこで整えればよいのか?

ここまでの話を踏まえると、確認すべきはこの3点に絞られます。

  • 市場平均(約4%)を超えるために、商品ページの質を底上げできているか
  • 商品点数が増えても、写真の品質と見せ方が揃っているか
  • 撮影のために、社内の時間と手間をこれ以上かけなくて済むか

この3点に応えるのが、撮影を外に出すという選択です。私たちの運営する「物撮り.jp」は、白背景のEC向け商品撮影を1カット550円からお受けしています。全国どこからでも、非対面で依頼できます。定型の商品カットをまとめて整えたいときに向いています。

一方で、使用シーンや世界観まで見せたい商品もあるはずです。その場合は、ライフスタイル・D2C向けの撮影サービス「フォトル」が役割を分担します。モデルのキャスティングやモデル撮影、動画制作も、用途に合わせてご相談いただけます。定型カットは物撮り.jp、世界観づくりはフォトル、という使い分けです。

すべてを任せる必要はありません。まずは、売れ筋の数点だけ撮り直して反応を見る。一度試してみる価値はあるでしょう。料金や条件の最新情報は、各サービスページでご確認ください。

国内EC市場についてのよくある質問

2025年の国内BtoC-EC市場規模はいくらですか?

27兆5,580億円で、前年比5.5%増です。内訳は物販系15兆8,233億円、サービス系8兆9,362億円、デジタル系2兆7,985億円です。経産省が2026年10月21日に公表しました。 

EC化率とは何を示す数字ですか?

商取引全体のうち、ECで行われた金額の割合です。2025年の物販系BtoCでは9.80%でした。対象は物販系のみで、サービス系・デジタル系には使われません。

物販ECの伸びが落ち着いたのは、実店舗に戻ったからですか?

今回確認できた公表データでは、原因までは断定できません。EC化率はほぼ横ばいですが、食品(+6.96%)や家電・PC関連(+5.05%)は平均を上回って伸びています。カテゴリーごとに事情が違うため、一律の理由では説明しにくいところです。

サービス系ECの伸びは、今後も続きますか?

将来の数字は断定できません。2025年は+8.64%でしたが、伸び率は2022年の32.43%から鈍化を続けています。追い風だった回復の反動が弱まるなか、次の公表値で水準が保たれるかが注目点です。

まとめ:27.6兆円の中身から、EC事業者が取るべき行動

まとめ:27.6兆円の中身から、EC事業者が取るべき行動

これまでの内容を整理します。

  • 市場全体:2025年の国内BtoC-EC市場は27兆5,580億円(前年比5.5%増)。物販系57%、サービス系32%、デジタル系10%の構成です。2019年比では約1.4倍になりました。
  • 物販の落ち着き:伸び率は2020年の21.71%から3〜4%台へ。ただし毎年約6,000億円ずつ増えています。EC化率は9.78%から9.80%でほぼ横ばいです。
  • サービスの伸び:2021年から5年連続で拡大し、2025年は+8.64%。増加額は約7,100億円で物販を上回りました。ただし伸び率は鈍化しています。
  • 物販カテゴリー:食品・飲料・酒類が3兆3,332億円で最大です。家電・PC関連は+5.05%で、物販全体の平均を上回りました。
  • 事業者への示唆:市場が約4%伸びる中で売上が横ばいなら、シェアは下がっています。競争は商品ページの質に出やすくなります。
  • 注意点:EC化率は物販系のみ。市場規模は推計かつ金額ベースです。数字は一次情報で確認しましょう。

これから行うべき行動は3つです。自社の売上成長率を市場平均(+3.97%)と比べること。売れ筋の商品ページの写真を点検すること。写真に不足があれば、まず数点から撮り直して反応を見ることです。商品撮影のご依頼やご相談は、物撮り.jpからお気軽にどうぞ。

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