ECリスティング広告の最新動向。AI運用へ切り替える4つの手順
目次
2025年の日本のインターネット広告費は4兆459億円で、総広告費に占める割合は初めて5割を超えました。その中で、ECのリスティング広告は、キーワードを手で調整する仕事から、AIに渡す情報を整える仕事へ変わりつつあります。結論から言うと、手動運用は終わっていません。ただし、成果を分けるのは商品データと設定の管理です。初心者から運用のプロまで、2026年の変化を比較しながら整理します。
ECのリスティング広告は、2026年に何が変わったのか?

結論から言うと、検索広告の運用は「キーワード中心」から「AI中心」へ移りつつあります。ただし、人が担う仕事がなくなったわけではありません。
変化の全体像は、どうなっているのか?
ポイントは3つ。検索はAI Maxへ、ショッピングは商品データとAIの組み合わせへ、動画系はDemand Genへと、それぞれ統合が進んでいる点です。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年5月 | AI Max for Search campaignsの提供が始まる |
| 2025年9月 | 動画アクションキャンペーンが終了し、Demand Genへ移行 |
| 2026年3月 | LINEヤフー広告の検索広告(ショッピング)で、自動入札機能(β版)の提供が始まる |
| 2026年4月 | AI Max for Searchが正式提供に移行。4月30日にはショッピングへも拡張 |
| 2026年6月 | DSAの終了・自動アップグレードが2027年2月に延期 |
| 2026年9月 | 自動作成アセットとキャンペーン単位のブロードマッチが、AI Maxへ自動アップグレード。LINEヤフー広告で検索クエリーマッチングが提供開始 |
市場の追い風は、何なのか?
結論から言うと、広告費はネットへ大きく移っています。ただし、伸びの中心は動画とSNSで、リスティング単独の数字は今回確認できませんでした。
電通の「2025年 日本の広告費」では、インターネット広告費は前年比110.8%の4兆459億円で、総広告費に占める構成比は50.2%でした。CARTA HDなどの分析では、ビデオ(動画)広告が1兆275億円で初めて1兆円を超え、ソーシャル広告は1兆3,067億円でした。
つまりECの広告担当は、検索やショッピングだけでなく、動画やSNSを含めた全体の中で、リスティング広告の役割を考える段階に入っています。
手動運用とAI運用は、何がどう違うのか?

ポイントは3つ。設定の主体、見るべき指標、人の役割です。違いは次の表のとおりです。
| 項目 | 従来(手動中心) | 2026年(AI中心) |
|---|---|---|
| 入札 | キーワード単位で細かく調整 | 目標(ROASやCPAなど)を設定し、AIが調整 |
| 広告文・遷移先 | 人が作成・指定 | AIが生成・選択(AI Maxなど) |
| 配信面 | 検索が中心 | PMaxは複数の面にまたがって配信 |
| 人の役割 | 入札とキーワードの調整 | データ・目標・制御ルールの設計 |
手動入札は、本当に終わったのか?
「手動入札の時代は完全に終わった」と思われがちですが、実際は、手動の余地が狭まり、人の役割が移っている段階です。
AI Maxは新しいキャンペーン種別ではなく、既存の検索キャンペーンに重ねるAI機能群です。キーワードにない検索語句にも広告を出し、広告文や遷移先も検索に合わせて調整します。キーワードがなくなったわけではないのです。
効果の数字も出ています。Google内部のデータでは、AI Maxを使う広告主は、同程度のCPA・ROASでコンバージョンが平均14%増えると紹介されています。ただし、これはGoogle自身の数字です。同じ解説は、予算に余裕がない場合や成果の変動を避けたい場合は、まず小さな予算で試して厳密に測るよう勧めています。
PMaxは「お任せ」で成果が出るのか?
「商品データさえあればAIが勝手に売ってくれる」と言われがちですが、実際は、設定と確認が欠かせません。
PMaxも他のキャンペーンと同じように、毎週の確認と最適化が必要とされています。検索語句の見えにくさも、よく指摘される点です。ただし、PMaxの検索語句レポートを表示できるアカウントは多く、除外キーワードの効果も確認できます。一方、自社の指名キーワードを除外すると、ほとんどのケースでコンバージョン率が下がったという報告もあります。除外は、やみくもに増やさないことが大切です。
初心者はまず何を押さえるべきか?

結論から言うと、初心者が最初に取り組むのは、商品データの整備と、少額での検証です。キーワードの細かい調整は、後回しで構いません。
ショッピング広告とPMaxは、何を指すのか?
ショッピング広告とは、検索結果に商品画像・価格・店舗名が並ぶ広告です。PMax(パフォーマンス最大化)は、1つのキャンペーンで複数の面にAIが配信する仕組みです。
ショッピング広告は、商品が見える分、買う気のある人に届きやすいと言われます。ただし、日本でのテキスト広告との比較データは、今回確認できませんでした。PMaxは、検索、ショッピング、YouTube、Gmail、Discover、マップなどに配信される仕組みで、商品データと、画像・動画・テキストなどの素材を渡して使います。
初心者向けメモ
- 商品データ(フィード):商品名・価格・画像などを一覧にしたデータ
- ROAS:広告経由の売上 ÷ 広告費
- CPA:1件の成果を得るのにかかった広告費
- CVR:クリックした人のうち、購入した割合
最初にやることは、何か?
ポイントは3つ。商品データを整える、少額で始める、成果を商品別に見る、の順です。
- 商品データを整える:タイトル・説明文・画像を、具体的で正確にそろえる
- 少額で始める:ショッピング広告かPMaxを、小さな予算で試す
- 成果を見る:商品別、検索語句別に、売上と費用を確認する
プロはどこに時間を使うべきか?

結論から言うと、プロが時間を使うべきなのは「商品データ」「顧客価値(LTV)の学習」「制御ルール」「素材の制作」の4つです。入札の微調整ではありません。
商品データは、どこまで整えるべきか?
ポイントは3つ。タイトルは具体的で正確に、説明文は前半に要点を、画像は規約を守ることです。
タイトルは広告で特に目立つ要素で、具体的で正確なものを登録すると、適切な購入者に広告を出せるとされています。生成AIで作ったタイトルには、構造化されたタイトル属性を使います。説明文は500〜1,000文字ほどを目安に、サイズ・素材・対象年齢などの重要な情報を、最初の160〜500文字に入れるよう案内されています。
画像にも注意が要ります。商品に重なる販促テキストなどは画像に使えず、不承認の対象になります。
さらに、AI主導の表示面を意識した属性も増えています。Merchant Centerには、Q&A、関連商品、バリエーション、人気順位などを渡す会話型の属性が用意されています。なお、「データフィードの質で成否の8割が決まる」といった割合の根拠は、確認できませんでした。
LTVや新規顧客を、どう学習させるのか?
「新規客を安く獲得すれば勝ち」と思われがちですが、実際は、リピートする顧客かどうかで、価値は大きく変わります。
Google Ads APIは、検索、ショッピング、PMaxで、新規顧客を効率的に獲得するための顧客獲得目標をサポートしています。国内の事例では、アパレル企業が、3か月以内に2回目を購入した人の行動を自社データから抽出し、PMaxのAIに学習させて、LTVを意識した顧客基盤づくりに取り組みました。
ただし、顧客データの広告利用では、同意の取得と個人情報の取り扱いが前提です。自社の運用ルールを、事前に確認しましょう。
AIに任せる範囲を、どう制御するのか?
結論から言うと、AIが広がるほど、除外・ブランド・URLの制御が重要になります。
AI Max for Shoppingには、ブランド設定、URL除外、テキストガイドラインなどの制御手段が用意されています。ECでは、意図しないページへの送客、ブランドを損なう広告文、粗利の低い商品の露出増加が起こり得ると指摘されています。
AI Max for Searchのテキストガイドラインでは、1キャンペーンあたり最大25の語句除外と40のメッセージ制限を設定できます。日本での提供状況は、管理画面とヘルプで確認してください。
素材(アセット)は、どう増やすのか?
ポイントは2つ。AIの学習には素材の多様性が効くこと、生成AIの画像は実物との一致が欠かせないことです。
Googleは2025年8月にAsset Studioを開始し、テキスト指示で画像や動画を生成できるようにしました。11月には、PMaxで高度な画像生成が使えるようになりました。日本で使える機能かどうかは、管理画面で確認が必要です。
生成した画像が実際の商品と違えば、買い手の誤解を招きます。基本の商品写真は実物を撮り、背景や演出を拡張する、という使い分けが安全でしょう。
LINEヤフー広告(Yahoo!広告)は、どう変わったのか?

結論から言うと、2026年は、ショッピング広告の自動入札、配信面の拡大、AIによる検索拡張と、Googleと同じ方向に進んでいます。
- 3月:検索広告(ショッピング)で、自動入札機能(β版)が提供開始
- 7月:検索結果ページで、上部を除き、ユーザーの利用状況に応じた場所に検索広告を出す変更が順次適用
- 8月下旬:検索連動型ショッピング広告の掲載面が、Yahoo!検索に加えて、Yahoo!オークションなどLINEヤフーの各種サービスへ順次拡大
- 9月:検索意図やアセット、ランディングページの内容を踏まえて関連性の高い検索クエリに配信する「検索クエリーマッチング」が提供開始。広告表示アセットの自動化機能は全アカウントで有効になる
自動化が標準で有効になる機能は、成果への影響を確認し、必要なら設定を見直しましょう。配信傾向が変わる可能性もあります。
これから、EC広告はどうなるのか?
「AIモードにすぐ広告が出る」と言われがちですが、日本では未定の部分が多く、先に確認できる変化と、まだ見えない変化を分けて考える必要があります。
AI検索と広告は、日本でどこまで来ているのか?
結論から言うと、AIモードの新しい広告は米国先行で、日本の導入時期は未定です。
Google Marketing Live 2026の発表は米国向けで、日本の導入時期や展開の詳細は、現時点では未定の情報を含むとされています。AI Overviewsの中に直接表示される広告も、現時点では英語環境の一部の国に限られ、日本は含まれていません。AI Overviewsの上部・下部の広告は、200以上の市場が対象になり得ます。また、買い物のハブとなる「Universal Cart」も、日本での提供は明記されていません。
Cookieとデータは、どうなるのか?
ポイントは3つ。Chromeは廃止を見送ったこと、Privacy Sandboxは縮小されたこと、自社データの価値は変わらないことです。
Googleは2025年4月、サードパーティCookie廃止に向けた新機能の導入を見送りました。同年10月には、プライバシーサンドボックスのほとんどの技術を廃止すると発表しています。一方、Firefoxは追跡目的のサードパーティ由来のクッキーを標準で広く遮断しています。
つまり、「Cookieが消えたから従来手法が通用しない」という説明は正確ではありません。それでも、同意を得た自社の顧客データを活用できる事業者が有利になる点は、変わらないでしょう。
備えは3つです。商品データを正確に整える、自社の顧客データを適切に集める、AIに任せる範囲を管理する。どの変化にも通用する土台です。
AI運用へ切り替える4つの手順と、事前チェックは?

ポイントは4つ。データを整える、目標を決める、制御を設計する、小さく検証する、の順です。
切り替えの手順は、どう進めるのか?
結論から言うと、いきなり全面移行せず、一部の商品で試し、数字で判断します。
- データを整える:商品データ(タイトル・説明文・画像)と、ランディングページを見直す
- 目標を決める:粗利から逆算した目標ROASやCPAを決める。「1÷粗利率」が損益分岐のROASの目安(粗利率25%なら400%。例示)
- 制御を設計する:除外キーワード、ブランド設定、URL除外、粗利の低い商品の扱いを決める
- 小さく検証する:一部の商品・予算で試し、前後の数字を比べてから広げる
導入前のチェックリストは何か?
- 商品データのタイトル・説明文・画像が、規約に沿っているか
- 粗利から、目標ROASやCPAを計算したか
- 除外キーワード、ブランド、URLの制御を決めたか
- コンバージョン(購入)の計測が正確か
- 検証の期間と、比較する指標を決めたか
- 自動化機能が有効になる時期を把握しているか
失敗しがちなケースと回避策は?
| 失敗しがちなケース | 回避策 |
|---|---|
| 商品データが薄いままAIに任せる | タイトル・説明文・属性を整えてから開始 |
| 指名キーワードをむやみに除外する | 除外の前後で成果を比べて判断 |
| 粗利を見ずにROASを追う | 粗利から目標を逆算 |
| 自動アップグレードを把握していない | 時期と設定を事前に確認 |
ここまでの条件を満たす素材は、どこで揃えられるのか?

結論から言うと、AIを活かす素材は「正確な商品画像」「世界観と使用シーン」「動画・人物」の3つです。ここは撮影で整えられる領域になります。
この条件を全部満たそうとすると、選択肢は自然と絞られてきます。商品データの規約を守りつつ、素材の量と質も確保する必要があるためです。画像は、商品に重なる販促テキストやロゴを避ける必要があります。
当社では、目的に応じて次のように役割を分けています。
| 素材 | 窓口 | 内容 |
|---|---|---|
| 商品データ用の基本画像 | 物撮り.jp | 白背景のEC向け商品撮影。1カット550円から、全国から非対面で依頼可能 |
| 使用シーン・世界観の素材 | フォトル | ライフスタイル・D2C向けの撮影 |
| 動画・人物の素材 | モデル撮影・動画制作 | モデルのキャスティング、モデル撮影、動画制作を用途に合わせて対応 |
なお、入札設定や配信設計といった広告運用そのものは、運用の専門会社の領域です。素材の面で何から整えるか迷ったら、一度見てみる価値はあるでしょう。
ECのリスティング広告に関するよくある質問
手動入札は、もう不要ですか?
不要とは言えません。AI Maxは既存の検索キャンペーンに重ねる機能で、手動の設定が残る場面もあります。ただし役割は、入札の微調整から、目標と制御の設計へ移っています。
PMaxと通常のショッピング広告は、どちらから始めるべきですか?
目的次第です。PMaxは配信面が広く、管理も必要です。まず商品データを整え、少額で検証してください。通常のショッピング広告との併用は、検索語句を確認しながら判断するのが安全でしょう。
AI Maxは、日本で使えますか?
AI Max for Searchは正式提供が報じられています。ショッピング向けはベータ版の位置づけで、日本での提供状況の確認が必要です。管理画面とGoogle広告のヘルプで確かめてください。
サードパーティCookieは、廃止されたのですか?
Chromeでは廃止に向けた新機能の導入が見送られました。ただしFirefoxなど、追跡を制限するブラウザもあります。状況は一様ではなく、自社データの活用が重要です。
AIモードの広告は、日本でも出ますか?
発表は米国向けで、日本の導入時期は未定とされています。当面は、既存の検索広告やショッピング広告がAI検索の面にどう出るかを、情報収集しながら見守る段階です。
まとめ:ECリスティング広告は「データと制御」で差がつく

手動運用は終わっていません。ただ、成果を分けるのは、AIに渡す情報の質と、任せる範囲の管理です。ここまでの内容を整理します。
- 全体像:検索はAI Max、ショッピングは商品データとAI、動画はDemand Genへ統合が進む。2025年のネット広告費は4兆459億円
- 移行の時期:AI Maxは2026年4月に正式提供。DSAの自動アップグレードは2027年2月に延期。自動作成アセットなどは2026年9月から
- 手動とAIの違い:入札はAIに移るが、手動の余地は残る。PMaxも継続的な管理が必要
- 初心者:商品データの整備、少額での検証、商品別の成果確認から始める
- プロ:商品データ、LTV・新規顧客の学習、制御ルール、素材制作に時間を使う
- LINEヤフー広告:ショッピング広告の自動入札、配信面の拡大、検索クエリーマッチングなど、AI化が進む
- 将来:AIモード広告やUniversal Cartは米国先行で、日本は未定。Cookieは廃止ではなく、自社データの価値は変わらない
- 切り替え:データ→目標→制御→検証の4手順で、小さく進める
- 素材:基本画像、世界観、動画・人物を整える
次の行動は3つです。まず商品データのタイトル・説明文・画像を見直す。次に、粗利から目標ROASを計算し、除外やブランド設定を決める。最後に、一部の商品で試して数字で判断する。商品画像やモデル撮影、動画の準備が必要になったら、物撮り.jp・フォトル・モデル撮影・動画制作の窓口へ、お気軽にご相談ください。