【プロの撮影ルール】腕時計の商品撮影で絶対に外せない5つのこだわりと撮影方法
目次
腕時計の商品撮影で、最も重要な「こだわりの撮影方法」は何か?

その答えは「反射を完全にコントロールし、光をデザインすること」です。
高級腕時計の魅力は、その精緻な作りと素材の輝きにあり、それらを最大限に引き出すのが光の役割です。
この記事では、私たち「物撮り.jp」が数多くのブランド腕時計を撮影する中で確立した、売上を左右する撮影の絶対的ルールと具体的な方法を、専門カメラマンの視点から徹底的に解説します。
なぜ腕時計の撮影は難しいのか?プロが直面する2つの壁

ECサイトやカタログで美しい腕時計の写真を見るのは簡単ですが、実際に撮影しようとすると、多くの人がその難しさに直面します。
私たちプロでさえ、腕時計は特に神経を使う商材の一つです。
その理由は、大きく分けて2つの壁が存在するからです。
壁1:光の反射との戦い
腕時計は「反射の塊」です。風防(ガラス)、光沢のあるケース、金属製のブレスレット、針、インデックスなど、あらゆるパーツが周囲のものを鏡のように映し込みます。
- 映り込みのコントロール: 撮影しているカメラマンや部屋の照明、余計な機材が風防やケースに映り込んでしまうと、途端に安っぽい写真になります。これを防ぐには、光の当て方や撮影環境を緻密に設計する必要があります。
- 素材感の表現: ただ反射を消すだけでは、のっぺりとした質感のない写真になってしまいます。ステンレスの重厚感、ゴールドの輝き、レザーベルトのしなやかさを表現するには、意図的に美しい光のグラデーションを作り出す高度なライティング技術が求められます。
壁2:微細なディテールの表現
腕時計の価値は、文字盤の繊細な装飾(ギョーシェ彫りなど)、針の形状、ブランドロゴの仕上げといった細部に宿っています。
- 解像度とピント: スマートフォンや一般的なカメラ設定では、これらのディテールをシャープに写し出すことは困難です。ミクロ単位のズレが全体の印象を損なうため、どこにピントを合わせ、どの範囲までを鮮明に見せるか(被写界深度)という専門的な判断が不可欠です。
- 埃や指紋の問題: 肉眼では見えないほどの小さな埃や指紋も、高解像度で撮影すると非常に目立ちます。撮影前のクリーニング作業が、写真のクオリティを大きく左右するのです。
物撮り.jpが実践する腕時計撮影「5つの絶対ルール」

これらの壁を乗り越え、最高の1枚を撮影するために、私たち「物撮り.jp」では以下の5つのルールを徹底しています。
これらは長年の経験から導き出された、いわば成功への最短ルートです。
ルール1:時刻は「10時10分35秒」に合わせるのが鉄則
これは腕時計撮影における世界共通のルールです。これには明確な理由があります。
- 美しさの追求: 長針と短針が左右対称に美しく広がり、安定感のある構図を作ります。
- ブランドロゴの視認性: 12時位置にあることが多いブランドロゴが、針に隠れることなくはっきりと見えます。
- 機能性の表示: 6時位置にある日付表示やスモールセコンド(秒針)なども隠れません。
【現場での経験】
あるクライアントから「自社のラッキーナンバーである8時20分で撮影してほしい」と依頼されたことがあります。
もちろんご要望通り撮影しましたが、やはりロゴの一部が隠れ、針のバランスも悪く見えました。
最終的に10時10分で撮り直した写真と比較し、その美しさの違いに納得していただき、それ以来「お任せします」と言っていただけるようになりました。
時刻一つで、時計が持つ「顔」の印象は劇的に変わるのです。
ルール2:「面」で光を創るライティング術
腕時計に直接的な光(点光源)を当ててはいけません。
必ず「面光源」を使います。これは、トレーシングペーパーや専用のディフューザー(光を拡散させる機材)を通して、光を柔らかく、大きく広げるテクニックです。
目的: 映り込みを防ぎ、ケースやブレスレットに滑らかな光のグラデーションを作るため。
具体的な方法:
- 腕時計の左右、あるいは上部に大きなディフューザーを配置します。
- そのディフューザーに向かってストロボやLEDライトの光を当てます。
- 腕時計には、ディフューザーという「光る面」から発せられる柔らかい光だけが届く状態を作ります。
これにより、周囲の余計なものが映り込むのを防ぎつつ、金属の立体感や輝きを上品に表現できます。
私たちはこれを「光で商品を包み込む」と呼んでいます。
ルール3:埃や指紋を徹底的に排除する下準備
撮影時間の半分は、この下準備に費やされると言っても過言ではありません。
- 手袋の着用: 商品に直接触れる際は、必ず指紋がつかないよう専用の手袋を着用します。
- ブロワーで埃を除去: まずはブロワー(空気で埃を吹き飛ばす道具)で大きな埃を取り除きます。
- 専用クロスで拭き上げ: レンズ用のクリーニングクロスなどで、ケースや風防についた微細な汚れや油分を丁寧に拭き取ります。
- 最終チェック: 強い光を当てながら、様々な角度から見て埃が残っていないか最終確認します。
【過去の失敗談】
キャリアの浅い頃、この下準備を怠ったために、文字盤のインデックスの隙間に入り込んだ微細な繊維に気づかず撮影してしまったことがあります。
後からPCの大きな画面で発見し、その修正(レタッチ)に撮影時間の何倍もの時間を費やしました。
この苦い経験から、「撮影前の1分は、レタッチの1時間に匹敵する」という教訓が私たちのチームの合言葉になっています。
ルール4:ピントは「ブランドロゴ」に合わせるのが鉄則
腕時計の写真は、どこにピントが合っているかで印象が全く異なります。
私たちのルールは、「必ず文字盤のブランドロゴにジャストピントを合わせる」ことです。
理由
ブランドロゴは時計の心臓部であり、顔です。ここにピントが合っていることで、写真全体が引き締まり、高級感と信頼性が生まれます。
カメラ設定の専門性
これを実現するために、カメラの絞り(F値)をF8〜F16程度に設定します。これにより、ロゴから針、インデックスまで、文字盤の主要な部分がくっきりと見える「適度な被写界深度」を得ることができます。
ルール5:質感を最大限に引き出すレタッチ
撮影したままのデータ(RAWデータ)を完成品とすることはありません。
必ずプロのレタッチ(画像編集)で仕上げます。
ただし、これは「無から有を生む」魔法ではありません。
あくまで撮影で捉えた素材の魅力を最大限に引き出すための作業です。
- コントラスト調整: 金属部分の光沢と影の差をわずかに強調し、立体感を際立たせます。
- シャープネス処理: ブランドロゴや文字盤の印刷部分の輪郭を少しだけ鮮明にし、精緻な印象を高めます。
- 色調補正: ベルトの革の色や、金属の色が実物と忠実に再現されるように微調整します。
これらのルールを一つ一つ丁寧に実行することで、初めて消費者の購買意欲を掻き立てる一枚が完成するのです。
まとめ:こだわりの撮影がブランドの価値を高める

腕時計の商品撮影は、単に形を記録する作業ではありません。
ブランドが持つ世界観、職人のこだわり、素材の美しさを一枚の写真に凝縮させる総合芸術です。
今回ご紹介した「5つの絶対ルール」は、私たちが1カット550円という価格で高品質な写真を提供するために、日々徹底しているこだわりの撮影方法のほんの一部です。
これらの準備や撮影には専門機材と多くの時間が必要です。
「こだわりの写真をすぐにでもネットショップで使いたい」「新商品の撮影をどこに頼めばいいかわからない」という方は、ぜひ一度「物撮り.jp」にご相談ください。
商品をスタジオに郵送いただくだけで、全国どこからでもプロのクオリティを最短3日でお届けします。
あなたのブランドの価値を、写真の力で最大限に高めるお手伝いをさせていただきます。
