プレスリリースに必須な新商品写真とは?記者の目に留まる撮影術
目次
プレスリリースで記者が記事にしたくなる新商品写真の条件は、「商品の全貌が歪みなく伝わる白背景の切り抜き用写真」と「使用シーンやサイズ感が直感でわかるイメージ写真」の2枚を揃えることです。どれだけ画質が良くても、この用途別の2枚がないとメディア側は掲載を見送ります。媒体のレイアウトに合わせて柔軟に使い分けるための素材提供が、広報にとって最も重要な役割だからです。
こんにちは、ピックアパートメントのカメラマン、篠原です。 広報の皆さん、新商品の発表に向けた準備、本当にお疲れ様です。プレスリリースの文章作りに頭を悩ませる日々かと思いますが、写真については「とりあえず手元のカメラで綺麗に撮れたからこれでいこう」と妥協していませんか?
正直、ここが一番つまずくポイントです。
記者は毎日、膨大な数のリリースに目を通しています。文章がどれほど素晴らしくても、添付されている写真が使いにくいという理由だけで、記事化のチャンスを逃しているとしたら、すごくもったいないですよね。 私はこれまで広告やECサイト、ブランドのキービジュアルなど、数え切れないほどの現場で撮影を行ってきました。その経験から断言できるのは、メディアに掲載される写真には「明確な法則」があるということです。
単なる綺麗さではありません。「記者がどれだけ使いやすいか」という実務的な視点がすべてです。本記事では、プロの現場で行っている思考プロセスや具体的な設定数値を公開し、そのまま実践できるレベルで解説していきます。
1. 記者が「記事にしやすい」と感じる写真の条件

記者が記事を作成する際、彼らの頭の中にはすでに「媒体のレイアウト枠」が存在しています。正方形の枠、横長のヘッダー枠、縦長のサイドバー枠など様々です。 そのため、彼らが求めているのは「加工しやすく、どんな枠にも当てはめやすい写真」です。
ギリギリまで商品が大きく写っている写真は一見迫力がありますが、媒体側からすると非常に扱いにくい素材です。周囲の空間が足りないため、トリミング(切り抜き)の自由度が全くないからです。
「この写真、上部にタイトル文字を入れたいのに余白がないな。別のリリースを取り上げよう」 現場では、このような判断が日常的に行われています。撮影時は必ず、商品の周囲に広めの余白を取るよう意識してください。
2. プレスリリースに必須となる「2種類の写真」

メディア側を動かすためには、最低限以下の2種類の写真を必ず用意してください。
① 白背景の切り抜き用写真(商品単体)
商品の形状、色、デザインを正確に伝えるためのカタログ的な写真です。背景は純白(RGB値で255,255,255に限りなく近い白)が最適です。少しでもグレーがかっていたり、シワのある布を背景にしたりすると、デザイナーが商品を切り抜く作業に時間がかかってしまいます。 「面倒な作業が発生する素材」は、それだけで敬遠される原因になります。
② 使用シーンやサイズ感がわかるイメージ写真
商品が実際の生活の中でどのように使われるのかを表現した写真です。 例えば、新しいマグカップのリリースであれば、デスクの上にノートPCと一緒に置かれている様子や、実際に人物の手が添えられている様子を撮影します。これにより、読者はスケール感(大きさ)や使用感を瞬時に理解できます。
3. 現場で失敗しないための機材と設定

ここからは、具体的な技術の話に入ります。「なんとなくカメラ任せ」は今日で終わりにしましょう。
■ レンズの選び方(50mm〜85mmが鉄則)
スマートフォンや広角レンズ(24mmや35mm)で商品に近づいて撮影すると、パース(遠近感)が強くつき、手前が異常に大きく、奥が小さく歪んで写ります。 商品の正確な形状を伝えるには、50mmから85mm程度の「標準〜中望遠レンズ」を使用してください。少し離れた位置からズームして撮ることで、人間の目で見たままの自然な形を再現できます。
■ 絞り(F値)は「F8〜F11」に固定する
背景をぼかした写真は雰囲気が出ますが、プレスリリース用の基本写真としては不適切です。商品の一部にしかピントが合っていないと、全貌が伝わりません。 商品の先端から奥まで、隅々までシャープにピントを合わせるために、カメラのF値は「F8〜F11」に設定してください。
■ ISO感度とシャッタースピード
画質を最高に保つため、ISO感度は「100または200」の最低値に固定します。 ストロボを使用する場合は、シャッタースピードは同調速度である「1/125秒」前後に設定するのが基本です。三脚を使用すれば、ブレのリスクは完全に排除できます。
4. 質感を最大限に引き出すライティングの極意

写真のクオリティの9割は「光のコントロール」で決まります。 室内照明の真下で撮影すると、商品の上部に不要な影が落ち、色が濁ってしまいます。室内の照明はすべて消し、撮影用のライト(ストロボや定常光LED)だけで光を作るのがプロの鉄則です。
■ 光の角度は「半逆光(斜め後ろ45度)」から当てる 商品の正面から光を当てると、影が消えてしまい、のっぺりとした立体感のない写真になります。 商品の斜め後ろ(時計の文字盤でいうと10時または2時の方向)から、ディフューザー(光を柔らかくする白い布やソフトボックス)を通した光を当ててください。 これにより、商品の表面に美しいハイライト(反射)が入り、金属のツヤ感や布の柔らかさといった「素材の質感」が鮮明に浮かび上がります。
■ 手前には必ず「レフ板」を置く 斜め後ろから光を当てると、商品の手前側が暗くなります。そこで、商品の手前(カメラ側)に白いボード(レフ板)を配置します。後ろからの光をレフ板で反射させ、暗くなった部分を優しく明るく持ち上げるのです。 この「1灯+レフ板」の組み合わせが、最もシンプルで確実なライティング構造です。
5. 媒体側に喜ばれるアングルと構図の考え方

商品の魅力を伝えるためのアングル選びも重要です。
- 正面(アイレベル): 商品の顔を正確に伝える基本アングル。
- やや俯瞰(斜め上45度): パッケージの上面と正面を同時に見せたい場合に有効です。立体感が最も伝わりやすい角度です。
- 真上からの俯瞰(俯瞰撮影): お皿に盛られた料理や、複数の商品を平面的に並べて見せたい場合に適しています。
撮影の際は、必ず「横位置」と「縦位置」の両方でシャッターを切ってください。ウェブメディアのトップ画像は横長が主流ですが、スマートフォンのニュースアプリ内では縦長のトリミングが求められることも多いからです。
これらの条件を満たした写真をプレスリリースに添付するだけで、記者からの見え方は劇的に変わります。「この会社の素材は使いやすいな」と思ってもらえれば、継続的な関係作りにも繋がっていくのです。
手順解説

現場ですぐに実践できるよう、撮影手順を3つのステップに整理しました。
- Step1:環境作りとカメラのセッティング 室内の天井照明をすべて消します。カメラを三脚に固定し、レンズを中望遠(50mm〜85mm)にセット。カメラの設定をマニュアルモードにし、ISO100、F値8〜11、シャッタースピード1/125秒に合わせます。
- Step2:メインライトとレフ板の配置 商品の斜め後ろ45度の位置に、ソフトボックスを装着したライトを配置します。光を当ててみて、商品の手前側が暗くなるのを確認したら、ライトと向かい合わせになるよう手前側に白いレフ板を立てます。これにより質感を出しつつ全体を明るくします。
- Step3:アングルの微調整と余白の確保 ファインダーを覗きながら、商品が歪んで見えない位置を探ります。媒体側でトリミングや文字入れがしやすいよう、画面いっぱいに商品を配置するのではなく、周囲に30%程度の余白を残した状態でシャッターを切ります。
よくある失敗
- 失敗1:商品の奥がボケていて、パッケージの文字が読めない
- 原因: カメラの絞り(F値)を開けすぎている(F2.8などにしている)ため、被写界深度が浅くなっている状態です。F8〜F11まで絞り込むことで全体にピントが合います。
- 失敗2:商品の形が歪んで、不自然に膨らんで見える
- 原因: スマートフォンなどの広角レンズで商品に近づきすぎているためです。少し離れた位置から中望遠レンズ(50mm〜85mm)を使って撮影することで、正しい形状が保たれます。
- 失敗3:商品の色が実物と全く違う色になっている
- 原因: オフィスの蛍光灯の光と、撮影用のライトの光が混ざり合う「ミックス光」が起きています。カメラのホワイトバランスが迷ってしまうため、必ず部屋の電気は消し、撮影用ライトの光のみで撮影してください。
判断基準
私が現場で撮影データをチェックする際、以下の基準をクリアしているか必ず確認します。
- 切り抜き耐性: 商品の輪郭が背景に溶け込まず、くっきりと分離しているか。境界線があいまいだとデザイナーが切り抜けません。
- 情報の完全性: パッケージに印字された小さな文字やロゴが、拡大してもシャープに読み取れるか。(F値とピントの確認)
- 質感の表現: ハイライト(一番明るい部分)からシャドウ(影)へのグラデーションが滑らかで、ツルツル、ザラザラといった素材感が一目で伝わるか。
- 汎用性: トリミング枠をどこに配置しても対応できるよう、上下左右に十分な余白が確保されているか。
FAQ
Q: スマートフォンでもプレスリリース用の写真は撮影可能ですか?
A: 社内共有などの記録用途なら可能ですが、プレスリリース用としては避けるべきです。スマートフォン特有の広角レンズによる歪みが出やすく、正しい形状が伝わりません。また、背景を純白に飛ばすような細かな光のコントロールが難しいため、デジタル一眼カメラと中望遠レンズの使用が必須です。
Q: 背景の「白」は、画用紙や模造紙を敷けば大丈夫ですか?
A: 紙の継ぎ目やシワ、折り目が写り込んでしまうと切り抜き作業の妨げになります。撮影用の背景紙(ケント紙のロールなど)を使用し、壁から床にかけて緩やかなカーブを描くように垂らして設置(アールホリゾント)してください。境界線のない綺麗な白背景が作れます。
Q: イメージ写真を撮る際、小物はたくさん入れた方が良いですか?
A: 主役はあくまで新商品です。小物が多すぎると視線が散り、何についてのプレスリリースなのか瞬時に伝わりません。添える小物は商品の使用シーンを連想させる最低限のアイテム(コーヒーメーカーなら、カップと豆程度)に留め、主役を引き立てる構成にしてください。
まとめ
- 必須なのは「白背景の切り抜き用」と「利用シーンがわかるイメージ用」の最低2枚
- 形状を正確に伝えるため、レンズは標準〜中望遠(50mm〜85mm)を使用し歪みを防ぐ
- 隅々までピントを合わせるため、カメラの絞り(F値)はF8〜F11に設定する
- 陰影をコントロールし、素材の質感を伝えるために定常光やストロボを活用する
- 記者が文字を乗せやすいよう、周囲に十分な「余白」を残して撮影する
プレスリリース用の写真は、芸術作品を作ることではありません。「媒体側の担当者が、どれだけストレスなく記事化の作業を進められるか」という徹底した実務目線が求められます。
- 歪みのないレンズ選び
- 隅々までピントを合わせる絞りの設定
- 質感を表現する光のコントロール
- 使いやすさを考慮した余白の確保
これらは才能やセンスではなく、知っていれば誰でも再現できる「ロジック」です。 今回解説した手順と設定数値をそのまま現場で模倣してみてください。メディアからの反応率が明確に変わることを実感できるはずです。新商品の魅力が、一人でも多くの読者に届くことを応援しています。

