グラス撮影の「映り込み」は消せる。透明感を劇的に高めるプロの透過・黒締め術
株式会社ピックアパートメントの篠原です。
春商戦に向けた新作グラスや、清涼飲料水のボトル撮影。 広報担当の皆さんが、社内の会議室でカメラを構えて最初にぶつかる壁。それは間違いなく「映り込み」と「透明感の欠如」でしょう。
「何度撮っても、カメラを構えた自分がグラスの中にいる」 「カタログのようなクリアな質感にならず、全体的に白く濁っている」
こんな経験はありませんか? 照明を増やせば解決すると思って、LEDライトを左右からガンガン当ててしまう。実はこれ、逆なんです。
結論から言います。 ガラスやアクリルといった透明な被写体を撮る際、重要なのは光を当てることではありません。「光を透かすこと」と「余計な光を遮断すること」。この2つが全てです。
今日は、私たちプロが現場で当たり前に行っているけれど、一般の方にはあまり知られていない「黒締め(くろしめ)」や「透過光」の技術について、包み隠さずお話しします。これを読めば、なぜ社内撮影でうまくいかなかったのか、その物理的な理由が腑に落ちるはずです。
グラスは「照らす」のではなく「透かす」もの

まず、根本的な認識を変えましょう。 不透明なマグカップなら、光を当てれば色は出ます。しかし、ガラスは光を透過します。正面からフラッシュを焚いたり、ライトを直接当てたりすると、その光源自体がガラス表面にバチッと反射し、見苦しい「ハイライトの点」ができてしまいます。
さらに悪いことに、強い光はガラスの透明感を奪い、全体を白っぽく「フレア」させてしまいます。
春らしい、向こう側が透き通るようなクリアな写真。 これを撮るために必要なのは、被写体の後ろ側から光を当てる「透過光(バックライト)」です。
想像してみてください。 晴れた日に、窓際でグラスを持ち上げて太陽にかざした時、中の飲み物がキラキラと輝いて見えますよね? あれが透過光です。スタジオ撮影では、この現象を人工的に作り出します。被写体の背後にトレーシングペーパー(トレペ)や乳白色のアクリル板を置き、そのさらに後ろから照明を打つ。
こうすることで、光は「柔らかい面」となってグラスを後ろから包み込み、中の液体を発光させるのです。正面からの光は、実は補助的な役割に過ぎません。
Caption: 【透過光の基本セット】光源はグラスの「後ろ」にある。トレペ越しに光を拡散させ、液体の色を内側から引き出す。
「自分」が写り込んでしまう物理的な理由
「どうしても、カメラマンの私や、部屋の蛍光灯が写り込むんです……」
この相談、本当によく受けます。 理由は単純。ガラスは円柱状の「鏡」だからです。しかも360度、周囲の景色をすべて映し込んでしまいます。
会社の会議室で撮影している場合、天井の蛍光灯、窓、白い壁、そしてカメラを構えるあなた自身。これらすべてが、ガラスの曲面に沿って歪んで写り込みます。
これを防ぐには、極論を言えば「被写体の周りをすべて黒くする」しかありません。 私たちプロのスタジオがなぜ壁も天井も黒いのか。それは、ガラスや金属への写り込みを防ぐためです。
白い部屋で撮る場合、私たちはカメラのレンズ部分だけ穴を開けた「黒い布」や「黒レフ板」で自分の体を隠します。さらに、被写体の周りを黒い板で囲い、物理的に写り込むものを排除します。そこまでやって初めて、あの純粋な透明感が生まれるのです。
現場の解決策①:輪郭を描く「黒締め」と「白締め」
ここで、少し専門的なテクニックの話をします。 透明なグラスを白背景で撮るとどうなるか。輪郭が背景に溶け込んでしまい、形がわからなくなりますよね。
そこで使うのが「黒締め(くろしめ)」という技法です。
方法は驚くほどアナログです。 グラスの左右ギリギリ(カメラの画角に入らない位置)に、黒いケント紙やボードを立てます。すると、その黒い色がグラスの「フチ」に映り込み、輪郭がキリッと黒く縁取られます。
これによって、透明なガラスに「形」が生まれます。高級感のあるウイスキーグラスや、重厚感を出したいボトル撮影では必須のテクニックです。
逆に、春向けの商品で「軽やかさ」や「爽やかさ」を出したい場合は、「白締め(しろしめ)」を使うこともあります。左右に白いレフ板を置くことで、フチを白く飛ばし、エアリーな印象にするのです。
この「締め」の調整こそが、プロの腕の見せ所。数センチ、いや数ミリ単位で板の位置を動かし、グラスの曲面に走るラインの太さをコントロールします。正直、この微調整だけで1時間を費やすこともザラにあります。
Caption: 【黒締めの効果】左は何もなし。右は左右に黒ケント紙を配置。黒を映り込ませることで、透明なガラスの輪郭が明確になり、立体感が生まれる。
現場の解決策②:液体のシズル感を出す「バックライト」
次に、中身のドリンクです。 春の新作ソーダや、冷たいお茶。美味しそうに見せるポイントは「シズル感」ですよね。
ここで重要なのが、先ほど触れた「透過光」の入射角です。 真正面から照らすと、水滴はただの白い点になり、液体はのっぺりとします。しかし、斜め後ろ(半逆光)から光を入れると、水滴のフチにハイライトが入り、まるで宝石のような立体感が生まれます。
さらに、液体の色味。 例えば、薄いピンク色の桜ドリンク。背景が白で、光が強すぎると、ピンク色が飛んでただの水に見えてしまいます。 ここで私たちは、ボトルの背面に、ボトルよりも一回り小さい形に切った銀紙や白紙を貼ったり(裏貼り)、ライトの出力を1/10段単位で調整したりして、「色が一番美しく透けるポイント」を探ります。
この作業は、感覚ではありません。光学的な計算と、経験則の積み重ねです。
正直、撮影よりも「ホコリ」との戦いが過酷

ライティングが決まった。映り込みも処理した。 さあシャッターを切るぞ、という段階で、最大の敵が現れます。 「ホコリ」と「指紋」です。
最近のデジタルカメラは高画素すぎて、肉眼では見えない微細な繊維やチリまで克明に写し取ってしまいます。特に透過光で撮るガラス製品は、表面のホコリだけでなく「裏側のホコリ」までシルエットになって写ります。
現場では、帯電防止ブラシやエアダスターを使い、手袋をして慎重に扱いますが、それでもホコリは付きます。 そうなると、撮影後のレタッチ(画像処理)で一つ一つ消していくしかありません。
しかし、ガラスのレタッチは至難の業です。 不用意に修正ツールを使うと、ガラス特有の屈折やグラデーションが崩れ、そこだけ「異空間」のように歪んでしまいます。違和感なくホコリを消すには、熟練のレタッチ技術が必要です。
ここで考えていただきたいのが、コストパフォーマンスです。 セッティングに2時間、撮影に1時間。そしてレタッチに2時間。 たった1枚の完璧な画像を自社で作るために、担当者様の業務時間を半日以上費やすことになります。 それが10商品あったら? ……ゾッとしますよね。
コストを最適化する「プロへのアウトソーシング」という選択

私たちプロは、こうした「物理的な正解」を知り尽くした上で、効率化されたワークフローを持っています。 もし今、あなたが「もう少し綺麗に撮りたいけれど、機材も場所も技術も足りない」と感じているなら、それは外部に任せるべきタイミングです。
経営的な視点で見れば、担当者様が苦労して何日もかけるより、プロに依頼して数日で納品される方が、トータルコストは圧倒的に安く済みます。
用途に合わせて、私たちピックアパートメントの2つのサービスをご検討ください。
カタログ・ECスペック重視なら「物撮り.jp」

「春の新作グラス、サイズ違いで全20種類。ECサイト用に白背景でしっかり見せたい」 「カタログスペックとして、ボトルの形状や色を正確に伝えたい」
そういったニーズには、「物撮り.jp」が最適です。 私たちはガラス撮影専用のライティングセットを常設しており、映り込み処理や黒締めといった高度な技術を、流れ作業のようにスピーディーに行う体制を整えています。
1カットあたりの単価を抑えつつ、大手メーカーのカタログ品質を保証します。「大量の商品を、早く、正確に、美しく」。この難題をクリアするための最適解です。
ブランドイメージ・シーン重視なら「フォトル」

「単なる商品写真ではなく、春の木漏れ日を感じさせるような一枚が欲しい」 「インスタグラムで見た瞬間に『欲しい!』と思わせる、リッチなビジュアルが必要だ」
商品の世界観やブランドイメージを伝えたいなら、「フォトル」にお任せください。 ここでは、単に商品を撮るだけでなく、スタイリングやシチュエーション作りからご提案します。
例えば、春の日差しを再現したライティング。グラスの横に添える桜の花びらや、リネンクロスの質感。 ガラスの透明感を活かしつつ、そこに「生活の匂い」や「季節の空気」を吹き込みます。 読者の感情を動かし、購買意欲を刺激するクリエイティブな撮影なら、こちらが正解です。
まとめ
- ガラスは鏡である:正面から照らすと反射で台無しになる。
- 透過光が命:後ろからの光(バックライト)で、透明感と液体の色を引き出す。
- 黒締め・白締め:左右にボードを置き、映り込みをコントロールして輪郭を作る。
- ホコリとの戦い:高画質ゆえの微細な汚れは、撮影前のケアと高度なレタッチでしか解決できない。
- コストの考え方:特殊な機材と技術が必要なガラス撮影こそ、アウトソーシングで質と時間を買うべき。
自社での試行錯誤は、素晴らしい経験になります。 ですが、春商戦は待ってくれません。 確実なクオリティとスピードが必要な時は、ぜひ私たちプロの手を借りてください。あなたの商品の「本当の透明感」を、私たちが引き出します。

