ガラス撮影の映り込み地獄。カメラマンが教える「透明」を作る物理学

2026.2.11
ガラス撮影の映り込み地獄。カメラマンが教える「透明」を作る物理学

株式会社ピックアパートメントのカメラマン、篠原です。

ギフトや記念品を扱う企業の担当者様から、悲鳴のような相談をよく受けます。 「クリスタルのトロフィーをスマホで撮ったら、撮影している私の必死な顔が写り込んでしまいました」 「黒い布で体を隠してみたんですが、今度はカメラのレンズだけが黒い点として写ってしまいます」

わかります。痛いほどわかります。 ガラス、アクリル、金属。これら「反射物」と呼ばれる素材は、私たちプロにとっても手強い相手です。なぜなら、これらは「そこにあるものを写す」のではなく、「周りの景色を反射している状態を写す」作業だからです。

特にガラスは厄介です。透明であるがゆえに、背景も、手前も、横も、すべてを透過・反射させます。 多くの担当者様が「どうやって映り込みを消すか(=後処理)」に悩みますが、プロの思考回路は逆です。「最初から映り込まない環境をどう作るか(=物理)」で勝負します。

今日は、機材と知識がないと太刀打ちできないガラス撮影の裏側、そしてそれを自社でやろうとすることがいかに「茨の道」かをお話しします。

なぜ「レンズの穴」だけが消えないのか。反射の物理学

なぜ「レンズの穴」だけが消えないのか。反射の物理学

まずは敵を知りましょう。なぜ、あんなにも頑固に映り込みが発生するのか。

ガラスは「鏡」だと思え。360度すべてが写る恐怖

ガラス製品を撮るとき、「透明な物体」だと思ってはいけません。「360度すべてを映す鏡」だと思ってください。 正面から撮れば正面の景色(カメラとあなた)が、斜めから撮れば斜めの景色(部屋の壁や窓)が写ります。

特に、記念品のトロフィーやフォトフレームのような平板なガラスは、完全な平面鏡と同じ働きをします。曲面であれば景色が歪んで誤魔化しが効くこともありますが、平面は残酷なほど正直に、対面にあるものを反射させます。

つまり、通常のオフィスや会議室でガラスを撮るということは、「散らかったオフィスを鏡越しに撮っている」のと同じことなのです。これでは、いくら商品を綺麗に拭いても意味がありません。

「黒布作戦」の限界。レンズだけが写る理由

そこで皆さんがたどり着くのが「黒布作戦」です。 黒い布やボードに穴を開け、そこからレンズだけを出して撮影する。あるいは、全身黒ずくめの服を着て撮影する。

確かに、これで撮影者の顔や服の映り込みは防げます。しかし、どうしても消せないのが「レンズの穴」です。 カメラのレンズ自体は、光を取り込むために黒く、ガラスでできています。この「黒くて丸い物体」が、真正面にある被写体のガラス面に反射してしまうのです。

これは物理的に避けられません。真正面に鏡(被写体)があり、その真正面にカメラがある限り、カメラは自分自身の姿を鏡の中に見てしまいます。この「レンズの黒い点」を消すために、多くの担当者がPhotoshopでの修正作業に何時間も費やしています。でも、文字が入っていたり、複雑なカットが入っていたりすると、修正すら不可能です。

部屋を消し去り、透明感を呼ぶ。「白と黒」の空間支配術

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では、私たちプロはどうしているのか。 レタッチで消しているわけではありません。撮影の段階で「消している」のです。そのための具体的なセット組みをご紹介します。

乳白アクリルとトレペで「光のドーム」を作る

まずやるべきは、被写体の周りから「部屋の景色」を遮断することです。 私たちは、乳白色のアクリル板やトレーシングペーパー(トレペ)を使って、被写体を囲むような「ドーム(天蓋)」を作ります。

例えば、トップ(上)と左右、そして手前までトレペで覆ってしまいます。その外側からストロボを当てることで、トレペ全体が発光し、柔らかな白い光が被写体を包み込みます。 こうすることで、ガラスに写り込むのは「均一な白い光」だけになります。部屋の蛍光灯も、デスクの上の書類も、すべてトレペの外側にあるため写り込みません。

この「光のドーム」の中に商品だけが存在する状態を作る。これがガラス撮影の第一歩です。

究極の奥義。シフトレンズで「正面から逃げる」

しかし、ドームを作っても「カメラのレンズ」だけは穴を開けて覗かなければなりません。ここで登場するのが、プロの秘密兵器「アオリレンズ(シフトレンズ)」です。 キヤノンで言えば「TS-Eレンズ」、ニコンなら「PCレンズ」と呼ばれる特殊なレンズです。

このレンズは、光軸をずらす(シフトする)ことができます。 どういうことかと言うと、カメラを商品の「真正面」ではなく、少し「横」や「上」に置きます。通常なら、斜めから撮った写真になりますよね? そこでレンズの機能を使って光軸をグイッとずらすと、カメラの位置は斜めなのに、写った写真は「真正面から撮った絵」になるのです。

鏡の正面に立てば自分が映りますが、鏡の斜め前に立てば自分は映りません。その理屈を利用し、カメラを「映り込みの死角」に隠しながら、正面の絵を撮る。 これが、レンズの穴すら写さない究極の物理的解決策です。このレンズ一本で数十万円しますが、ガラス撮影にはなくてはならない相棒です。

輪郭を描くのは光ではない。「黒」の映り込みだ

映り込みを消す話ばかりしましたが、実はガラス撮影で最も重要なのは「あえて映り込ませる」ことです。 完全に真っ白なドームの中で透明なガラスを撮るとどうなるか。 輪郭が消えて、ただの白いモヤになってしまいます。透明なものは、背景と同化してしまうのです。

そこで私たちは、商品の左右やエッジ部分に、細長い「黒いケント紙(黒レフ)」を映り込ませます。 これを「黒締め(くろじめ)」と呼びます。

ガラスのエッジに黒いラインがスーッと走ることで、初めて「そこにガラスがある」という硬質感と立体感が生まれます。 「余計なものは消し、必要な黒だけを映り込ませる」。このコントロールこそが、プロのライティング技術の真髄です。

「映り込み」との戦いは、時間の浪費。経営視点での再考

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ここまで読んで、「なるほど、シフトレンズを買ってドームを作ればいいのか」と思われたかもしれません。 しかし、現場のプロとして、あえて忠告させてください。そのセット、毎回組めますか?

1カットに30分?埃取りとレタッチの無限地獄

ガラス撮影の大敵は、映り込みだけではありません。「埃(ホコリ)」です。 静電気を帯びやすいガラスやアクリルは、空気中の微細な埃を吸い寄せます。肉眼では見えなくても、高画素のカメラとストロボ光の下では、無数の白い点が星空のように写ります。

撮影前に入念に拭き上げ、ブロアーで飛ばし、それでも写った埃をPC上で一つ一つ消していく。 セットを組むのに1時間、撮影しながら微調整で30分、その後の現像とゴミ取りで30分。たった1枚の画像のために、2時間近く消費することも珍しくありません。

もし商品が10個あったら? 20時間です。丸3日分の業務時間が消えます。 その間、あなたは他の仕事が一切できません。

撮影スペースの占有問題。会議室がスタジオ化していませんか?

また、光のドームやトレペのセットを組むには、それなりの広さが必要です。 会議室のテーブルを占領し、機材を広げ、窓からの外光を遮断するためにカーテンを閉め切る。 「撮影中は入ってこないでください!」と張り紙をして、社内の動線を止める。

これでは、会社全体の生産性が下がってしまいます。 ガラス撮影は、特殊な環境構築が必要です。日常業務の片手間でできるレベルを超えているのです。

プロに丸投げして、本来の業務に戻る。賢い選択肢

プロに丸投げして、本来の業務に戻る。賢い選択肢

機材代、セットを組む手間、レタッチの時間、そして精神的な疲労。 これらをコスト換算すれば、プロに依頼するほうが圧倒的に安上がりで、かつ合理的です。

弊社では、用途に合わせて2つの解決策をご用意しています。

【物撮り.jp】大量の記念品も、均一なクオリティで。

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カタログやECサイト用に、白背景で商品をハッキリ見せたい。商品点数が多い。そんな場合は「物撮り.jp」をご利用ください。

私たちは専用のスタジオに、ガラス撮影に特化したセットを常設しています。 シフトレンズはもちろん、映り込みを完全に制御できる環境が整っているため、お客様が会議室で数時間かけて悩むようなカットも、スムーズかつ高品質に撮影可能です。

特に、名入れの文字をはっきり読ませたい、ガラスの厚みを表現したいといったご要望には、正確なライティングでお応えします。1カットあたりの単価も抑えられているため、コストパフォーマンスは抜群です。

【フォトル】特別な一点物は、最高の世界観で魅せる。

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一方で、高級なクリスタルトロフィーや、ブランドのメインビジュアルとなるような一枚が必要なら、「フォトル」にお任せください。

こちらは白背景だけでなく、重厚感のある黒背景や、高級感を演出するスタイリング撮影が可能です。 ガラスの透明感だけでなく、「輝き」や「ラグジュアリー感」を最大限に引き出します。 反射を利用して煌びやかに見せるか、逆にマットに落ち着かせるか。ブランドイメージに合わせた絵作りを、専属のディレクターとカメラマンがご提案します。

まとめ

最後に、ガラス撮影のポイントを整理します。

  • ガラスは鏡: 部屋の景色も撮影者も、すべてが写り込むと心得る。
  • レンズ穴の呪縛: 正面から撮る限り、黒布を使ってもレンズの映り込みは消えない。
  • シフトレンズの威力: 物理的にカメラ位置をずらし、映り込みの死角から正面を撮るのがプロの技。
  • 白と黒の支配: 全体を白で囲ってノイズを消し、黒レフで輪郭を描く「黒締め」が必須。
  • 時間の浪費を防ぐ: 埃取りやレタッチ、セット組みにかかる膨大な時間を、プロへの依頼で削減する。

「透明なものを撮る」という行為は、写真の中でも特殊技能に属します。 その悩み、私たちプロに預けてみませんか?

あなたのデスクをスタジオ化する必要はありません。 箱に詰めて送るだけで、驚くほど美しく、透き通った商品写真が手に入ります。

「物撮り.jp」「フォトル」。 篠原が、スタジオでお待ちしています。

商品1点からでも撮影します

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