「ハンガー」対「平置き」論争に終止符を。アパレルの“シルエット”を支配し、ECの反応率を変えるプロの撮影物理学

2026.1.27
「ハンガー」対「平置き」論争に終止符を。アパレルの“シルエット”を支配し、ECの反応率を変えるプロの撮影物理学

こんにちは。株式会社ピックアパートメントの篠原です。

アパレル通販の立ち上げ準備、順調でしょうか? 商品サンプルが山積みになり、いざ撮影しようとしたとき、ふと手が止まる。「これ、ハンガーに吊るすべき? それとも床に置くべき?」

どちらも一長一短ありそうで、決め手に欠ける。わかります。 多くの担当者様が「どちらが安く済むか」「どちらが楽か」という基準で選びがちですが、現場の人間として言わせてください。 その基準は危険です。

なぜなら、撮影方法の選択ミスは、商品の「形」を歪め、最悪の場合「質の悪い服」に見せてしまうからです。 今日は、感情論やコスト論ではなく、物理的な特性から「あなたのブランドにはどちらが合うのか」を解説し、プロが現場で行っている整形テクニックをお伝えします。

コストで選ぶな。「重力」との相性で選べ

コストで選ぶな。「重力」との相性で選べ

まず結論から申します。 ハンガーか平置きかを決める最大の基準は、「その服が重力とどう付き合うか」です。

服は本来、人が着て立っている(=重力がかかっている)状態で美しく見えるように設計されています。 ですので、基本的には「ハンガー撮影(吊り)」の方が、デザイナーの意図したシルエットを再現しやすいのです。特にコート、ジャケット、ワンピースなど、着丈が長く、生地の落ち感(ドレープ)を見せたいアイテムはハンガー一択です。

一方で、「平置き」が輝くのは、重力の影響を無視して「形」を見せたい場合です。 Tシャツ、デニムパンツ、子供服、あるいは複数のアイテムを組み合わせたコーディネートを見せたい場合。これらは床に置いて形を整えることで、デザインの全体像を幾何学的に、かつ分かりやすく伝えることができます。

「コスト削減のために全部平置きで」と決めてしまうと、美しいロングコートが床でシワだらけになり、その価値を伝えきれなくなります。逆に「全部ハンガーで」とすると、柔らかいニットが伸びてだらしなく見えてしまうこともあります。

商材の「生地の硬さ」と「丈の長さ」。この物理特性を見て使い分けるのが正解です。

【ハンガー撮影】重力を味方につけ、ドレープを操る

では、それぞれの具体的なテクニックに入りましょう。まずはハンガー撮影です。

メリットは「着用時の重力再現」と「省スペース」

ハンガー撮影の最大の利点は、服が自然に下に落ちるため、着用時に近いシワやドレープ感が表現できることです。また、横幅を取らないため、狭いスペースでも撮影セットを組みやすいというメリットもあります。

失敗のメカニズム:「幽霊」になってしまう理由

しかし、素人の方が撮ると大抵失敗します。 よくあるのが、「幽霊みたいにペラペラで、寂しい写真」になる現象です。

原因は単純。人の体が入っていないからです。 人の体には厚み(奥行き)がありますが、ハンガーにはありません。そのため、服の前身頃と後ろ身頃がぺったりとくっつき、立体感が消失します。さらに、袖も力なくダラリと垂れ下がり、まるで生気のない抜け殻のように見えてしまうのです。

プロの解決策:肩パッドと「アンコ」で擬似ボディを作る

これを防ぐために、私たちは服の中に「擬似的な体」を作ります。

まず、ハンガー自体に工夫をします。市販の薄いプラスチックハンガーは使いません。 木製で厚みのあるハンガーを使うか、あるいはハンガーの肩先にウレタンや緩衝材(プチプチ)を巻きつけ、「肩の厚み」を作ります。これだけで、ジャケットやシャツの肩周りがピシッと決まります。

次に、「アンコ」と呼ばれる詰め物です。 薄葉紙(うすようし)をくしゃくしゃに丸めたものを、胸やお腹周り、そして袖の中に詰めます。 パンパンに詰めるのではありません。空気を含ませるようにふわっと入れ、前身頃と後ろ身頃の間に数センチの空間を作るのです。

これで服が呼吸し始めます。ペラペラだった幽霊が、立派な商品に変わる瞬間です。

袖に関しては、ただ垂らすのではなく、透明なテグス(釣り糸)で袖口を少し持ち上げたり、脇の下にピンを打って広がりを調整したりして、自然なAラインを作ります。

ライティングの肝は「トップライト」による陰影

立体感を出すには、光も重要です。 正面からフラットに光を当てると、せっかく作った立体感が消えます。

私は、メインライトを「真上〜斜め上(トップライト)」から当てます。 太陽光と同じ角度から光を当てることで、胸の膨らみや服のドレープの下に自然な影が落ちます。この「影」こそが、画面越しに厚みを感じさせる正体です。

さらに、左右から弱い光(フィルインライト)を当てて影の濃さを調整すれば、素材の質感まで伝わるリッチな写真になります。

【平置き撮影】重力から解放し、デザインを整理する

次に、平置き撮影です。 Instagramなどでも人気の手法ですが、これも実は非常に奥が深い世界です。

メリットは「情報の網羅性」と「コーディネート提案」

平置きは、襟から裾まで、あるいは裏地やタグまで、商品の情報を一枚の画角に収めやすいのが特徴です。 また、トップスとボトムス、帽子や靴などを並べた「置き画コーデ」は、お客様に利用シーンを想像させる強い力を持っています。

失敗のメカニズム:「脱ぎ捨てた服」に見える理由

社内で撮って失敗するパターンは、「ただ床に置いただけ」に見えることです。 服を床に置くと、重力で完全にぺちゃんこになります。すると、襟元が開きすぎたり、ウエストが太く見えたりして、だらしない印象を与えます。

「脱ぎ捨てられた洗濯物」に見えてしまうのは、服に「動き」と「テンション(張り)」がないからです。

プロの解決策:関節を作り、アクリル板で浮遊させる

平置きでも、立体感の演出は必須です。

まず、服の中に薄いウレタンシートや画用紙を入れます。これだけで適度な張りが出ます。 そして重要なのが「関節作り」です。 長袖のシャツなどを、気をつけの姿勢で真っ直ぐ置くと不自然です。

人間は関節が曲がっていますよね。 袖を肘の部分で少し曲げたり、裾に動きをつけて配置します。これだけで、「そこに人がいるような気配」が生まれます。

さらに、プロならではの裏技として、商品の下に数センチ角のアクリルブロックを挟み、床から少し浮かせます。 こうすると、商品の輪郭に影が落ち、背景から浮き上がって見えます。この「浮遊感」が、ベタッとした平面的な写真との決定的な差になります。

真俯瞰撮影の罠。自分の影を消すライティング配置

平置きの最大の敵は「自分の影」です。 商品を真上から撮ろうとすると、天井の照明を自分の体が遮ってしまい、商品に影が落ちます。

これを避けるには、照明機材を商品の「足元側」や「頭側」の低い位置から、水平に近い角度で当てます。 そして、カメラを構える自分の位置には光が通らないように、黒い板(ハレ切り)で光をカットするのです。 かなりアクロバティックな配置になりますが、これをしないとクリアな写真は撮れません。

どちらにも共通する絶対条件。「スチーム」という儀式

どちらにも共通する絶対条件。「スチーム」という儀式

ハンガーか平置きかに関わらず、絶対にやらなければならない工程があります。 それが「スチームアイロン(プレス)」です。

正直に申し上げます。撮影時間の半分は、カメラを持っていません。アイロンを持っています。 梱包から出したばかりの服は、畳みジワだらけです。これをそのまま撮れば、どんなに高いカメラを使っても、どんなに良いライティングをしても、「中古品」や「安物」に見えます。

業務用の強力なスチーマーで蒸気を当て、繊維をリラックスさせ、シワを伸ばす。 リブ編みや襟元は、指先で形を整えながら冷ます。 この地味で過酷な作業(夏場はサウナ状態です)こそが、写真のクオリティを底上げする最大の要因です。Photoshopでシワを消すよりも、撮影前に伸ばす方が圧倒的に早く、仕上がりも自然だからです。

「自社で撮る」が経営的なボトルネックになる瞬間

「自社で撮る」が経営的なボトルネックになる瞬間

さて、ここまで読んで「なるほど、やってみよう」と思われたかもしれません。 しかし、少し冷静に計算してみてください。

1着の商品をきれいに撮るために必要な工程:

  1. 袋から出す
  2. スチームでシワを伸ばす(5〜10分)
  3. ハンガーにかける、または平置きする
  4. アンコを詰める、形を整える(5〜10分)
  5. ライティングを調整する
  6. 撮影する
  7. 画像を選別し、色味を調整する
  8. リサイズしてアップロードする

慣れていない方がやると、1着あたり最低でも30分はかかります。 もし商品(SKU)が50着あったら? 25時間。つまり丸3日以上かかります。 その間、他の業務は一切できません。

さらに、撮影スペースとして6畳〜8畳ほどの部屋を占有し、機材を出しっぱなしにする必要があります。 「自社で撮る」ことは、見かけ上の外注費はゼロですが、担当者様の貴重な時間とオフィスのスペース、そして「クオリティ」という対価を支払っているのです。

プロに依頼することは、単に綺麗な写真を買うだけでなく、「スピード」と「本来の業務に集中する時間」を買うことと同義です。

目的別:最適な撮影サービスの選び方

目的別:最適な撮影サービスの選び方

弊社では、お客様の目的や予算に合わせて、2つの撮影サービスを用意しています。 どちらも私が監修し、今日お話しした技術を標準で組み込んでいます。

【物撮り.jp】大量のSKUを均質に。カタログ・スペック重視の正解

【物撮り.jp】大量のSKUを均質に。カタログ・スペック重視の正解

ECサイトの商品一覧ページや、詳細なスペックを見せる写真が必要なら、迷わず「物撮り.jp」をご利用ください。

  • 特徴: 白背景などのシンプルな背景で、商品のディテールを忠実に再現します。ハンガー撮影、平置き撮影のどちらにも対応可能です。
  • コストパフォーマンス: 徹底的に効率化されたワークフローにより、高品質ながら依頼しやすい価格設定を実現しています。
  • 均質性: 「前回の撮影と角度が違う」「明るさがバラバラ」といったことが起きません。サイト全体に統一感が生まれます。
  • スピード: 大量の商品も、熟練のスタッフがチームで対応するため、短納期で納品可能です。

「まずは全商品をカタログとしてしっかり見せたい」「色味や形を正確に伝えたい」という場合に最適です。

【フォトル】ブランドの世界観を構築。スタイリングで魅せる

【フォトル】ブランドの世界観を構築。スタイリングで魅せる

一方で、トップページや特集記事、SNSで使う「ブランドの顔」となる写真が必要なら、「フォトル」の出番です。

  • 特徴: スタイリングやシーン作り込みに特化したクリエイティブ撮影です。
  • メリット:
  • 世界観の演出: 例えば「平置き」でも、ドライフラワーや洋書などの小物を配置し、雑誌の1ページのような世界観を作り込みます。
  • 着用イメージ: 人物のパーツ(手足や首元など)を入れた撮影も可能です。ハンガーだけでは伝わらないサイズ感や、肌触りのイメージを直感的に伝えます。
  • 訴求力: 「ただの服」ではなく「ライフスタイル」として提案することで、お客様の購買意欲を強く刺激します。

「立ち上げ時にブランドイメージを強く印象づけたい」「Instagramでの反応を上げたい」という場合は、こちらが強力な武器になります。

まとめ

ハンガー撮影か、平置きか。 答えは「どちらが安いか」ではなく、「どちらがその服の魅力を最大限に引き出せるか」で選んでください。

  • ドレープや丈を見せるならハンガー。ただし、アンコ詰めとトップライトで立体感を出すこと。
  • デザインやコーデを見せるなら平置き。ただし、関節作りと浮かしテクニックで動きを出すこと。
  • 共通するのはスチーム。シワのある服は売れません。
  • これらの手間と技術を、すべて自社で抱え込む必要はありません。 面倒な「物理的な作業」は私たちプロにお任せいただき、皆様には「どんな服を誰に届けるか」という、ブランドの核心部分に注力していただきたいのです。

正確な商品カタログは「物撮り.jp」で。 心動かすブランドビジュアルは「フォトル」で。

あなたの渾身の商品たちが、画面の向こうのお客様に「着てみたい!」と思わせる瞬間を、私たちが作ります。 まずは、商品点数とどんなイメージにしたいか、ざっくりとした相談からでも構いません。お待ちしています。

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