「実物よりペラペラに見える」はなぜ起きる?タオルの“極上のふわふわ感”を写真に定着させる、プロのライティング物理学
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こんにちは。株式会社ピックアパートメントの篠原です。
春の新生活シーズン、タオルやリネン類の需要が最も高まる時期ですね。 各メーカー様も、自慢の「高密度パイル」や「極上の肌触り」をアピールしようと、商品ページの準備に奔走されていることと思います。
しかし、いざ撮影した写真を見て、頭を抱えてしまった経験はないでしょうか。 「あれ? 実物はもっとボリュームがあるのに……」 「写真だと、使い古した雑巾みたいに平面的に見える……」
手触りは最高なのに、それが画面越しだと伝わらない。 このジレンマ、実は商品の魅力を伝える上で致命的です。ネットショップでは、お客様は商品を触れません。写真から伝わる「質感」こそが、購入ボタンを押すかどうかの唯一の判断材料だからです。
今日は、なぜあなたの撮った写真が「ペタッ」としてしまうのか。そして、私たちプロがどうやって、あの「顔をうずめたくなるようなふわふわ感」を作り出しているのか。その裏側にある技術と物理法則をお話しします。
タオルの「ふわふわ感」は光の角度と「影」で作られる

最初に答えを言います。 ふわふわ感を出すために必要なのは、高性能なカメラでも、Photoshopでの過度な加工でもありません。 「意図的に影を作ること」です。
「えっ、商品写真は明るくきれいに撮るのが正解じゃないの?」と思われましたか? 実はこれが、多くの方が陥る最大の落とし穴なんです。
タオルの「ふわふわ」の正体は、無数に立ち上がったパイル(ループ状の糸)です。 このパイル一つひとつが立体的に見えて初めて、脳は「これは柔らかそうだ」と認識します。 そして、立体感を表現するために不可欠なのが「影」なのです。影がないところに、立体は存在しません。
つまり、「影を消して明るく撮ろう」とすればするほど、タオルの凹凸情報が消え、平坦な「ただの布」になっていくのです。
なぜ、社内で撮ると「ただの布」になってしまうのか?
社内で撮影担当の方がやりがちな失敗には、明確なパターンがあります。 もし、以下の撮り方に心当たりがあれば、それが「ペラペラ写真」の原因です。
正面からの光が「パイルの死」を招く
カメラの上についているストロボや、リングライトを使って、正面から光を当てていませんか? これを「順光」と言いますが、タオルの撮影において順光は最悪の選択です。
想像してみてください。月が満月のとき、クレーターの凹凸はあまり見えませんよね? でも、三日月の欠け際(明暗の境界線)を見ると、クレーターの凸凹がくっきり見えます。 これと同じ物理現象です。
正面から光を当てると、パイルの奥にできるはずの「影」がすべて光で塗りつぶされてしまいます。結果、パイルの凹凸情報が消失し、のっぺりとした平面的な写真が出来上がります。これが「パイルの死」です。
「白ければ清潔」という思い込みの罠
「タオルは清潔感が命だから、とにかく白く明るく飛ばそう」 この心理も危険です。
白飛びするほど明るく撮るということは、階調(グラデーション)を捨てることと同義です。 タオルの柔らかな風合いは、ハイライト(光が当たっている部分)からシャドウ(影の部分)への滑らかなグラデーションの中に宿ります。
全体を均一に明るくしてしまうと、そのグラデーションが消え飛び、質感どころか素材感さえも不明瞭になってしまうのです。
現場のプロが教える「繊維を立たせる」物理的解決策

では、どうすればいいのか。 私が現場で実際にセットを組む際、意識しているポイントは以下の3点です。
ライティングは「逆光気味のサイド光」一択
まず、メインの照明(キーライト)は、決して正面からは当てません。 商品の斜め後ろ、あるいは真横から光を走らせます。これを「半逆光」や「サイド光」と呼びます。
タオルの表面をなめるように低い角度から光を入れると、立ち上がったパイルの一つひとつにハイライトが乗り、その反対側に小さな影が落ちます。 この「ハイライト」と「影」の連続が、画像上に無数のコントラストを生み出し、それが人間の目には「豊かなボリューム感」として映るのです。
この時、光の質も重要です。 直射日光のような「硬い光」だと影が強すぎてゴワゴワした印象になります。 トレーシングペーパーやディフューザー(拡散布)を2枚ほど噛ませ、芯がありつつも包み込むような「柔らかい光」を作る。これが、高級タオルのしっとり感を出すコツです。
撮影前の「仕込み」が9割。スチームと空気の儀式
正直に言いますと、撮影時間の半分以上は、カメラを触っていません。 タオルのコンディションを整える「仕込み」の時間です。
袋から出したばかりのタオルは、畳みジワがついていたり、パイルが寝てしまっていたりします。そのまま撮れば、当然そのまま写ります。 私はまず、スチーマーを使って蒸気をたっぷりと含ませ、繊維をリラックスさせます。アイロンでプレスしてはいけません。プレスするとパイルが潰れるからです。
その後、タオルをバサバサと振って空気を含ませます。 さらに、ただ畳んで置くのではなく、タオルの間にアクリル板や丸めた紙などを挟み込み、人工的に「ふくらみ」を作ります。 「嘘をつくのか」と思われるかもしれませんが、これは商品のポテンシャルを最大限に見せるための「演出」です。
重力で沈んでしまう分を補正し、使用時のふんわりした状態を再現してあげるのです。
絞り値(F値)の調整で「柔らかさ」を演出する
カメラ設定の話も少ししましょう。 背景をボカしたいからといって、F値を小さく(開放に)しすぎていませんか? F1.8などで撮ると、ピントが合う範囲が薄すぎて、タオルの手前しか解像せず、奥がドロドロにボケてしまいます。これでは「素材感」が伝わりません。
逆に、F22まで絞りすぎると、パキパキになりすぎて硬い印象になります。 私の経験則ですが、タオルのような商材はF8〜F11程度で、パイルの質感をしっかり見せつつ、奥に向かってなだらかにボケていく設定がベストです。 マクロレンズを使い、パイルのループ一本にピントの芯を合わせることで、「触れそうな」臨場感が生まれます。
「自社で撮る」が経営的な損失になる瞬間

ここまで読んで、「なるほど、やってみよう」と思われたかもしれません。 しかし、少し冷静に考えてみてください。
この撮影を社内で再現するには、以下の環境が必要です。
- 機材: ストロボ2灯以上、ディフューザー、センチュリースタンド、マクロレンズ付きの一眼レフ、テザー撮影用のPCモニター。
- スペース: 光をコントロールするための、外光を遮断できる広い部屋。
- 時間: 1カットのために、スチームを当て、中に詰め物をし、ライトの位置をミリ単位で調整する30分〜1時間。
もし、春の新作で撮るべき商品(SKU)が50点あるとしたら? 1点に1時間かけていたら、撮影だけで丸一週間つぶれます。その間、担当者様の本来の業務(企画や営業)はストップします。
さらに、苦労して撮った写真が「やっぱりなんか違う」となった場合、その人件費と時間はすべてサンクコスト(埋没費用)です。 「自社でやる」ことは、見かけ上の外注費はゼロですが、見えない「機会損失」と「人件費」が膨大にかかっているのです。
プロに依頼するということは、単に綺麗な写真を買うだけでなく、「担当者様の時間」と「クオリティの担保」を買うことに他なりません。
目的別:最適な撮影サービスの選び方

弊社では、お客様の目的や用途に合わせて、2つの異なる撮影サービスを展開しています。 どちらも私が自信を持って監修していますが、使い分けることでコストパフォーマンスを最大化できます。
【物撮り.jp】大量のSKUを均質かつスピーディーに

ECサイトの商品一覧や、スペック重視のカタログ用写真なら、迷わず「物撮り.jp」をご利用ください。
- 特徴: 白背景などのシンプルな背景で、商品のディテールを忠実に再現します。
- コスト: 業界内でも合理的な価格設定で、大量のカラーバリエーションやサイズ違いを一気に撮影するのに最適です。
- 品質: 本日お話ししたライティング技術を標準装備しています。ペタッとした写真には絶対になりません。
- スピード: 熟練のスタッフが流れ作業で効率よく進めるため、納品が早いです。
「まずは基本の商品画像をしっかり揃えたい」「色味を正確に見せたい」というメーカー様に最適な選択肢です。
【フォトル】ブランドの世界観と使用感を伝える

一方で、トップページやSNS、特集記事で使う「エモーショナルな一枚」が必要なら、「フォトル」の出番です。
- 特徴: スタイリングやシーン作り込みに特化したサービスです。
- 演出: 朝の光が差し込むベッドルームや、バスケットに入った洗い立てのタオルなど、「そのタオルがある生活」をビジュアル化します。
- 人物の気配: 手のパーツタレントなどを起用し、実際にタオルに触れているシーンを撮影することで、柔らかさや弾力をよりダイレクトに伝えます。(※顔出しなしの手元のみ等の対応も可能です)
- 訴求力: 見た瞬間に「あ、気持ちよさそう」と直感させる、リッチなコンテンツ制作に向いています。
ブランドのファンを増やしたい、Instagramでの反応率を上げたいという場合は、こちらが強力な武器になります。
まとめ
タオルの撮影は、シンプルに見えて実は「光の物理学」そのものです。
- ふわふわ感の正体は「影」:全体を明るくしすぎず、影を残して立体感を出す。
- 逆光・サイド光が命:パイルの凹凸を浮き上がらせるライティングが必須。
- 仕込みが9割:スチームと詰め物による「演出」なしに、良い写真は撮れない。
これらをすべて自社で習得し、機材を揃え、時間を割くのは、経営判断として得策でしょうか? 「餅は餅屋」という言葉通り、写真は写真屋に任せていただき、皆様には「素晴らしいタオルを作ること」や「それをどう売るか考えること」に全力を注いでいただきたいのです。
カタログ用の正確な写真は「物撮り.jp」で。 心に響くブランド写真は「フォトル」で。
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