「そのファンデ、泥に見えてますよ。」スマホ接写の限界と、プロが描く"売れる"テクスチャの正体
目次
Instagramを開けば、とろりとした濃厚なクリームや、宝石のように輝くアイシャドウのパウダーが流れてきます。 それを見て、「うちの商品もこうやって撮りたい」と見よう見まねでやってみる。 アクリル板の上にファンデーションを垂らし、スマホを近づけてパシャリ。
結果、画面に映るのは、なんだか生々しい、ドロッとした不気味な液体。 「おかしいな、実物はこんなに綺麗なのに」
そう感じたことがあるなら、安心してください。あなたのセンスが悪いわけではありません。 道具と、光の当て方が、物理的に間違っているだけです。
なぜ、スマホで撮ると「ただの汚れた液体」になるのか?

まず、敵を知ることから始めましょう。 なぜ手元のスマホでは、あのプロっぽい写真が撮れないのか。
犯人は「広角レンズ」と「センサーサイズ」の物理的限界
最新のiPhoneやAndroidは確かに優秀です。しかし、根本的に「小さなモノを大きく撮る」ことには向いていません。
スマホのレンズは、基本的に「広角」です。 広い風景や集合写真を撮るのには便利ですが、小さなテクスチャに寄ろうとすると、強烈な「パース(歪み)」がつきます。 中心が膨らみ、周辺が引き伸ばされる。 これにより、本来なら均一であるはずのクリームの粒子感が歪み、不自然な形状に見えてしまうのです。
さらに問題なのが、センサーサイズです。 スマホの小さなセンサーでは、テクスチャの微細な凹凸が作り出すグラデーション(階調)を捉えきれません。 結果、シャドウ部分がベタっと潰れ、ハイライトが白飛びする。 これが、ファンデーションが「泥」や「ペンキ」のようにのっぺりと見えてしまう最大の原因です。
「瑞々しさ」が消える原因は、光の"芯"がないから
次に照明です。 社内で撮影する場合、天井の蛍光灯や、窓からの光、あるいは簡易的なリングライトを使っていませんか?
テクスチャ撮影において、「なんとなく明るい」は最悪の環境です。 化粧水やジェルの「瑞々しさ」「透明感」というのは、「ハイライト(光の反射)」の形で決まります。
ぼんやりとした光を当てると、ハイライトもぼんやりと滲みます。 すると、液体全体が白っぽく濁って見え、透明感が失われます。 逆に、スマホのライトを直射すると、今度は反射が強すぎて白飛びし、ただの「テカリ」になってしまう。
この「テカリ」が、皮脂や油汚れを連想させ、「汚い」という印象を与えてしまうのです。
現場のプロはこう撮る。テクスチャを輝かせる「光の物理学」

では、私たちプロはどうしているのか。 スタジオの奥で私が何をしているか、その種明かしをしましょう。
必須装備は「100mmマクロ」。歪みを消し去る魔法の筒
まず、レンズ選びから勝負は決まっています。 私がテクスチャ撮影で必ず使うのは、「100mm前後の中望遠マクロレンズ」です。
なぜ100mmなのか? それは、被写体からある程度距離を取れるからです。 スマホのように数センチまで近づく必要がないため、照明機材を配置するスペースを確保できます。 そして何より、歪みが極限まで少ない。
クリームの表面のなだらかな起伏を、見たままの形状で、画面の隅々まで解像させることができます。
このレンズを通して見ると、肉眼では気づかなかった「粉質の細かさ」や「ラメの多色感」までが見えてきます。 顕微鏡を覗いている感覚に近いかもしれません。
ラメ・パールには「点」、うるおいには「面」。照明の明確な使い分け
ここからが本題、ライティングです。 被写体の性質によって、光の質をガラリと変えます。
1. ラメ・パール系(アイシャドウ、ハイライター) これらを撮る時は、「硬い光(ハードライト)」を使います。 具体的には、ディフューザー(拡散布)を使わず、リフレクターを付けたストロボを直射したり、スヌートという筒を使って光をピンポイントで当てたりします。
ラメは、小さな鏡の集合体です。 強い点光源を当てることで、その鏡一つひとつが「ピカッ」と鋭く反射し、あのキラキラ感が生まれます。 ここで柔らかい光を使ってしまうと、ラメの反射が鈍り、ただのグレーの粉に見えてしまうのです。
2. 保湿・水分系(化粧水、クリーム、美容液) 逆に、水分感を出したい時は、「柔らかい光(ソフトライト)」と「映り込み」を作ります。 トレーシングペーパー越しに光を当てたり、黒いケント紙や白いアクリル板を液体の周りに配置して、その「形」を液体の表面に映り込ませます。
水滴の表面に、窓枠のような白い四角いハイライトが入っている写真を見たことがありませんか? あれは偶然ではなく、意図的に「四角い光源」を映り込ませているのです。
くっきりとしたハイライトと、深いシャドウ。このコントラストを描くことで、脳は「これは濡れている」「潤っている」と認識します。
実は一番大事なのは「盛り付け」。0.1mmの角を立てる職人芸
機材が揃っても、まだ足りません。 テクスチャ撮影で最も神経を使うのが、「テクスチャそのものの形作り(盛り付け)」です。
クリームをスパチュラですくって置く。 ただそれだけの動作に、私は1時間かけることもあります。
柔らかいクリームの場合、置いた瞬間から重力でダレてきます。 一番美しい「ツノ」が立った瞬間を撮るために、何度も盛り直します。 時には、粘度を調整するために冷蔵庫で冷やしたり、逆に少し温めたりして、理想の硬さコントロールします。
パウダーファンデーションなら、表面をわざと崩して「粉の柔らかさ」を表現するのですが、崩しすぎると「割れた汚いファンデ」になる。 針先のような細い棒で、粉の粒子をひとつひとつ整えるような作業。
これはもう、撮影というよりは「微細彫刻」の世界です。 これをAIやCGでやろうとすると、どうしても不自然さが残る。やはり物理的な「モノ」の力は偉大です。
撮影後の地獄。「ゴミ取り」と「色合わせ」の泥沼

シャッターを切って終わりではありません。 テクスチャ撮影の本当の戦いは、モニターの前に座ってから始まります。
4000万画素が映し出す、肉眼では見えないホコリとの戦い
高画素のマクロ撮影は残酷です。 空気中を舞う微細なホコリ、スパチュラのわずかな傷、化粧品の成分に含まれる気泡。 肉眼では絶対に見えないこれらが、4000万画素のモニターでは巨大なゴミとして映し出されます。
これをそのまま掲載すれば、「異物混入?」とクレームになりかねません。 かといって、肌修正ソフトで全体をぼかしてしまうと、せっかくのテクスチャの質感が消えてしまう。
だから私たちは、Photoshopで拡大率を200%にし、ドット単位でゴミだけを消していく作業を行います。 スタンプツールでポンポンと消す単純作業ではありません。 テクスチャの「流れ」や「キメ」を壊さないように、移植する皮膚(ピクセル)を選び抜く。
このレタッチ作業だけで、1カットに数時間を要することもザラにあります。
モニターによって色が違う?正解のない色調整への処方箋
さらに難しいのが「色」です。 「実物よりもピンクが薄い」「もっと赤みがあるはず」 D2Cブランドにとって、画面上の色は命です。色が違えば、届いた後の返品理由になります。
しかし、iPhoneで見る色、PCのモニターで見る色、Androidで見る色。すべて違います。 私たちは、キャリブレーション(色調整)された正確なモニター環境で基準となる色を作り込みます。 「どのデバイスで見ても、許容範囲内に収まる色」を探り当てる。
この正解のない調整作業も、プロの経験則がモノを言う領域です。
経営判断として。その「数時間」をどこに使うべきか

ここまで読んで、「気が遠くなりそうだ」と思われたなら、それが正常な感覚です。 「テクスチャを見せる」というのは、それほどまでに繊細で、手のかかる工程なのです。
機材代だけじゃない。見落としがちな「学習コスト」と「人件費」
社内でこれを再現しようとした場合、マクロレンズや照明機材の導入コストがかかります。 しかし、それ以上に重いのが「担当者様の人件費」です。
ライティングを組み、何度もテクスチャを盛り直し、ゴミを取り、色を調整する。 慣れない作業で1カット仕上げるのに半日かかったとして、その時間分の人件費はいくらになるでしょうか? そして、その半日があれば、本来やるべきマーケティング施策や商品企画がどれだけ進んだでしょうか?
「自社でやる」ことは、一見コストカットに見えて、実は貴重なリソースを浪費しているケースが多々あります。 餅は餅屋、写真は写真屋。 これは単なることわざではなく、合理的なビジネス判断だと私は考えます。
正確な色見本・カタログとして撮るなら「物撮り.jp」

もし、あなたが求めているのが、 「ECサイトの商品ページに載せる、正確な色味と質感がわかるテクスチャ画像」 「全10色のカラーバリエーションを、統一されたライティングで並べたい」 ということであれば、弊社の「物撮り.jp」にご依頼ください。
こちらは「カタログスペック」を重視したサービスです。 余計な演出を削ぎ落とし、商品の「ありのまま」を最高品質で記録します。 マクロ撮影のノウハウを持ったスタッフが、流れ作業ではなく、一点一点丁寧にライティングを組みます。
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圧倒的な世界観でSNSをハックするなら「フォトル」

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【まとめ】
- スマホ撮影の限界:広角レンズによる歪みと、センサーサイズ不足による階調飛びが「汚さ」の原因。
- プロの機材:100mmマクロレンズで歪みを排除し、距離を確保する。
- 光の使い分け:ラメには「点光源(ハード)」、水分には「面光源(ソフト)」と「映り込み」が必須。
- 職人芸:スパチュラを使った0.1mm単位の「盛り付け」がクオリティを左右する。
- 見えないコスト:レタッチ(ゴミ取り・色調整)にかかる膨大な時間を考慮すべき。
- 賢い選択:正確さなら「物撮り.jp」、世界観なら「フォトル」。目的に応じて使い分けるのが正解。
テクスチャは、言葉以上に商品を語ります。 その一滴、そのひと塗りに込められた開発者の想いを、私たちプロの技術で「伝わるカタチ」に変換させてください。 いつでも、スタジオでお待ちしています。

