ステンレス撮影の正体は「光」じゃない。「映り込み」を操るプロの金属ライティング術
目次
こんにちは、株式会社ピックアパートメントのカメラマン、篠原です。
キッチン用品メーカーの担当者様から、悲鳴のような相談をよく受けます。
「新作のカトラリー、どうしても実物のような高級感が出ないんです」 「タンブラーを撮ると、真っ黒な鉄の塊になるか、真っ白に飛んで何の商品かわからなくなるかの二択になってしまって……」
わかります。その悩み、痛いほどわかります。 私もアシスタント時代、ステンレス製品の撮影で師匠に何度怒鳴られたかわかりません。 「お前、自分の顔がスプーンに映ってるぞ!」と。
ステンレスやシルバーといった「金属製品」は、商品撮影の中でも一、二を争う難易度です。 正直に言いますが、普通の白いお皿や布製品を撮る感覚でライトを向けても、一生かかってもプロのような「艶(ツヤ)」は出せません。
なぜなら、アプローチが根本的に間違っているからです。 今日は、現場のプロが実際にどうやってあの滑らかな金属光沢を作り出しているのか、その物理的なロジックと具体的なセットアップを包み隠さず公開します。
なぜ、あなたのステンレス製品は「真っ黒」か「白飛び」するのか?

まず、敵を知ることから始めましょう。なぜ失敗するのか。 答えはシンプルです。ステンレスは「鏡」だからです。
そもそも、カメラは「金属そのもの」を写せない
少し哲学的に聞こえるかもしれませんが、物理の話です。 艶消しのマットな陶器などは、光を当てると表面で乱反射して、その物体自体が明るく見えます。 しかし、磨き上げられたステンレスは「正反射」の素材です。光をほとんど吸収せず、そのまま跳ね返します。
つまり、カメラに写っているのは「ステンレスそのもの」ではなく、「ステンレスの表面に映り込んだ周りの景色」なのです。
商品が真っ黒に写るのは、商品の周りが暗い(あるいは部屋の壁が遠すぎる)から、その「暗闇」が映り込んでいるだけ。 逆に、一部だけバチッと白飛びして見えないのは、ライトの電球そのものが映り込んでいるからです。
失敗の典型例。「裸のライト」が生む悲劇
よくある失敗が、明るくしようとしてライトを商品に直接向けてしまうパターンです。 これをやると、ライトの形(点光源)がそのまま商品に映り込み、強烈な白飛びが発生します。そして、それ以外の部分は真っ黒のまま。
結果、コントラストがきつすぎて、商品の形状も質感も伝わらない、いわゆる「記録写真以下」の画像ができあがります。 金属の美しさは「点」ではなく「面」で見せるものです。点の光を当てている時点で、勝負は負けています。
解決の糸口は「白い部屋」を疑似的に作ること
では、どうすればいいか。 「ステンレスは鏡」なのですから、鏡の中に「美しい白いグラデーション」を映り込ませてやればいいのです。
ライトを当てるのではありません。「商品が映し出すための景色」を作る。これがプロの思考法です。 私たちはこれを「環境を作る」と呼びます。
プロの現場で実践する「金属の艶」を出す物理的セット

ここからは具体的な機材の話をします。 高価な照明機材は必須ではありませんが、「光を拡散させる素材」は必須です。
光を回すな、光のトンネルを作れ(トレペアーチの魔術)
まず用意していただきたいのが、幅の広い「トレーシングペーパー(通称:トレペ)」です。文房具屋の薄いものではなく、画材屋にあるロール状のユポ紙やアートレなどが理想です。
これを商品の真上から覆いかぶせるように、アーチ状(トンネル状)に設置します。 商品はそのトンネルの中に置きます。 そして、ライトはこのトレペの外側から照射します。
こうすると、商品から見れば「自分を囲む空が、一面真っ白に光っている」状態になります。 この「発光する白いアーチ」がステンレス表面全体に映り込むことで、初めてあの滑らかな銀色の質感が表現されるのです。
「グラデーション」こそが金属の質感(シズル)である
ただ白くするだけでは、のっぺりとした灰色の塊になります。 ここで重要なのが「グラデーション」です。
トレペの外からライトを当てる際、全体を均一に照らすのではなく、「意図的にムラ」を作ります。 ライトをトレペに近づけると、その部分は強く光り(ハイライト)、離れるにつれて光が弱まり、滑らかに暗くなっていきます。
この光の減衰(グラデーション)がそのままステンレスに映り込むと、平面的な金属に「立体感」と「丸み」が生まれます。 「なんかプロっぽい!」と感じる写真の正体は、この計算された光の減衰なのです。
ぼんやりした写真を引き締める「黒締め」の極意
白いトンネルで覆うと、今度は全体が白っぽくなりすぎて、商品の輪郭(エッジ)が背景に溶け込んでしまうことがあります。 ここで使う必殺技が「黒締め(くろじめ)」です。
黒いケント紙やボードを細長く切り、商品の左右ギリギリ(カメラの画角に入らない位置)に置きます。 すると、ステンレスの側面にこの「黒」が映り込みます。 白の中に黒いラインがスッと入ることで、商品の輪郭がキリッと引き締まり、シャープで高級な印象に激変します。
「白で質感を作り、黒で輪郭を描く」。これが金属撮影の鉄則です。
カトラリーとタンブラー、形状別・攻略のメカニズム

基本セットができたら、次は商品の形に合わせた微調整です。
カトラリー(曲面・平面):ハイライトの筋を一本通す
スプーンやフォークの柄の部分。ここを美しく見せるには、縦に一本、スッと通ったハイライトが必要です。 トップライト(真上からの光)の位置を微調整し、柄の長さに合わせて光の芯が走るようにします。
ここで注意なのが、スプーンの「つぼ(すくう部分)」です。ここは曲面が複雑なので、部屋の天井やカメラマン自身が映り込みやすい危険地帯です。 私はよく、スプーンの角度を練り消しゴムなどで数ミリ単位で調整し、映り込みが消える「奇跡の角度」を探します。
タンブラー(円柱):左右対称の「黒」が高級感を作る
真空断熱タンブラーのような円柱形は、左右対称のライティングが最も美しく見えます。 先ほどの「黒締め」を左右均等に配置してください。 真ん中に太いハイライト(グラデーション)が通り、両サイドが黒く締まっている状態。
これができると、金属の硬さと重厚感が伝わります。 逆に、黒締めがないと、ただの灰色の筒に見えてしまい、購買意欲をそそりません。
映り込みとの戦い。カメラマンが黒い服を着る理由
余談ですが、私たち商品撮影のカメラマンが現場で黒い服ばかり着ているのをご存知ですか? オシャレだからではありません。被写体に自分が映り込まないためです。
白いTシャツを着てステンレスに近づくと、その白がボワッと商品に映り込み、せっかく作った黒締めを台無しにしてしまいます。 部屋の白い壁、天井の蛍光灯、窓枠…これらすべてがステンレスにとっては「映すべき景色」になってしまいます。
これらを全て遮断し、コントロール下に置くために、私たちはスタジオを暗くし、黒い布で覆うのです。
自社撮影の限界点と、経営判断としてのアウトソーシング

ここまで読んで、「理屈はわかった。よし、やってみよう」と思われたかもしれません。 しかし、現場のプロとして、あえて厳しい現実もお伝えしなければなりません。
埃ひとつが命取り。レタッチ地獄をご存知ですか?
ステンレス撮影の本当の恐ろしさは、撮影後のモニターチェックで判明します。 目視では見えなかった微細な指紋、空気中の埃、わずかな拭きムラ。 高解像度のカメラはこれらを残酷なまでに捉えます。
金属表面の埃は、他の素材に比べて目立ち方が尋常ではありません。 これをPhotoshopで一つ一つ消していく作業(レタッチ)は、慣れていないと1枚の写真で数時間を要することもあります。 撮影自体よりも、この「事後処理」に膨大なリソースを食われるのが金属撮影の罠です。
機材コストよりも「試行錯誤の時間」が最大の損失
トレペやライトを買うコストは大したことありません。 しかし、映り込みを消すために試行錯誤する時間、埃を消すレタッチの時間、納得がいかずに撮り直す時間。 これらはすべて、担当者様が本来行うべき「商品企画」や「販路拡大」の業務時間を削って行われます。
「1枚の完璧な商品写真」を作るために、半日を費やすことが、果たして経営的に合理的でしょうか? プロに任せるということは、単に綺麗な写真を買うだけでなく、「ビジネスのスピードと時間」を買うことでもあります。
目的に合わせた撮影サービスの使い分け(物撮り.jp / フォトル)

弊社では、お客様の課題解決のために、性質の異なる2つの撮影サービスを用意しています。 状況に合わせて使い分けていただくのが、最も賢い選択です。
カタログ・ECスペック重視なら「物撮り.jp」

Amazon、楽天市場、自社ECサイトの商品ページ(白背景画像)が必要なら、迷わず「物撮り.jp」をご利用ください。
- 特徴: 徹底したマニュアル化による効率撮影。均一なクオリティ。
- メリット: 金属撮影のような高難易度な案件でも、追加料金なしの明朗会計(※一部特殊ケースを除く)。大量のSKUがある場合もスピーディーに納品。
- こんな時に: 「新作カトラリー全20種類のカタログ写真が必要」「Amazonのメイン画像が暗くてクリックされない」。
私たちプロが、完璧なライティングセットと黒締め技術で、色味も質感も正確な「売れるカタログ写真」を短納期で仕上げます。
ブランドの世界観・SNS訴求なら「フォトル」

一方で、Instagramの投稿用や、特集ページのメインビジュアル、クラウドファンディングのトップ画など、「ブランドの世界観」を伝えたい場合は「フォトル」が最適です。
- 特徴: 専属のディレクターとカメラマンがチームを組み、スタイリングを含めた「絵作り」を提案。
- メリット: ステンレスの無機質な質感に、温かみのある食材やクロスを合わせ、生活シーンを演出します。
- こんな時に: 「タンブラーを使っている朝の食卓の風景が欲しい」「高級感を全面に出したブランドイメージを作りたい」。
単に商品を撮るのではなく、「その商品がある生活」を撮る。 光の演出から小物の配置まで、プロの感性でトータルコーディネートいたします。
まとめ
ステンレス撮影は、まさに「光と影のパズル」です。 適当に光を当てても、金属は答えてくれません。
- ステンレスは鏡: 光を当てるのではなく、白い環境を映り込ませる。
- トレペのトンネル: アーチ状に覆い、柔らかなグラデーションを作る。
- 黒締め: 左右に黒を配置し、輪郭をキリッと際立たせる。
- 映り込み除去: 部屋の余計な光や自分自身が映らないよう徹底的に遮断する。
これらの環境をオフィスの一角で作るのは、正直至難の業です。 正確な商品写真は「物撮り.jp」へ。 心を動かすイメージ写真は「フォトル」へ。
プロの技術とスタジオ環境を使い倒して、あなたの自慢の新作を、最高に輝く状態で世に出してあげてください。
撮影の悩みは私たちが引き受けます。
あなたは、その商品がお客様に届いた後の未来を考えていてください。 それが、篠原からの提案です。

