ホワイトデー商戦の落とし穴。「高級な詰め合わせ」が「安売りワゴン」に見えてしまう理由と、黒で締めるライティング術
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こんにちは、株式会社ピックアパートメントのカメラマン、篠原です。
ホワイトデーの準備、進んでいますか? バレンタインのお返し需要が高まるこの時期、菓子メーカー様やギフトショップの担当者様から、毎年決まって同じ相談を受けます。
「クッキー缶やマカロンの詰め合わせ、中身もパッケージも見せたくて全部並べて撮ったら、なんだかゴチャゴチャして安っぽくなるんです……」
自信作のクッキー、こだわりの箔押しパッケージ、彩り豊かなマカロン。それらを全部並べて、部屋の電気を明るくして、スマホや一眼レフでパシャリ。 モニターで確認して愕然とする。「これじゃスーパーの特売ワゴンみたいだ」と。
断言しますが、それは商品が悪いのではありません。「並べ方」と「光の当て方」が、人間の心理に対して逆効果なアプローチをしているだけなんです。
今日は、プロの現場で実際に使っているテクニック──特に「高級感」を演出するための照明と構図の物理的なロジック──を包み隠さずお話しします。
なぜ、並べれば並べるほど「チープ」になるのか?

まず、原因をはっきりさせましょう。 多くの担当者様は「情報を全て伝えたい」という親切心から、箱、蓋、個包装、中身のお菓子を、すべてカメラに向かって正対させ、均等に並べてしまいます。そして、影が出ないように全体を明るく照らす。
実はこれ、脳科学的にも視覚心理学的にも「安価な量産品」のシグナルを送っているのと同じなんです。
人間の目は「均一」なものを「量産品」と認識する
スーパーマーケットの棚を想像してください。商品は整然と、影なく、均一に並んでいますよね。 私たちの脳は、「均一な光」と「整列した配置」を見ると、無意識に「管理された在庫=コモディティ(日用品)」と認識する癖があります。
逆に、高級宝飾店や美術館はどうでしょうか? スポットライトで明暗がはっきりしており、主役だけが浮かび上がっている。 つまり、ギフトとしての「特別感」を出したいのに、影を消して明るくフラットに撮ってしまうと、脳が勝手に「これは日用品です」と判断してしまうのです。
カメラマンが恐れる「フラットライティング」の正体
「明るいは正義」だと思っていませんか? 商品撮影において、ただ明るいだけの写真は「説明図」であって「魅力的な写真」ではありません。
特にクッキーやフィナンシェのような焼き菓子の場合、表面の凹凸や焼き色のテクスチャこそが「美味しそう(シズル感)」の正体です。 正面から強い光を当てて影を消してしまうと、この凹凸の情報が飛び、のっぺりとした茶色の塊になってしまいます。
これが「ゴチャゴチャして安っぽく見える」物理的な原因です。立体感がない物体が画面内に散乱している状態。これでは高級感どころではありません。
解決の鍵は「引き算」の思考
ではどうするか。 答えはシンプルです。「見せたいもの以外を暗くする」こと。 そして、「全部を見せようとしない」こと。
プロの撮影現場では、光を足すこと以上に「光を遮る」ことに時間を使います。 「高級感」とは、光の量ではなく、影のコントロールによって生まれるからです。
クッキー缶・マカロンの「質感」を殺さない照明設計

ここからは、具体的なライティングの話をします。 高価なストロボがなくても、考え方さえ合っていれば、ある程度のライトで再現可能です。
柔らかい光だけでは「美味しそう」に撮れない
よく「ライティングキット」として売られている撮影ボックス。四方八方から光が回るあれですが、実は焼き菓子撮影には不向きな場合があります。 光が柔らかすぎると、クッキーのザラつきや、マカロンのピエ(足部分)の質感が埋もれてしまうからです。
必要なのは「芯のある光」と「拡散された光」のハイブリッドです。
現場の鉄則。トレーシングペーパー越しの「半逆光」
私がホワイトデーの商品を撮るなら、メインライトは絶対に「半逆光(斜め後ろ)」に置きます。 時計の針で言えば、カメラが6時だとしたら、ライトは10時か11時の方向、かつ高い位置から見下ろす角度です。
- 光源: ストロボや定常光LED。
- ディフューザー: ライトの直前ではなく、商品に近い位置に「トレーシングペーパー(トレペ)」を垂らします。
ライトとトレペの距離を離すほど、影のエッジが立ち(硬くなり)、近づけるほど影が柔らかくなります。 焼き菓子の場合は、少しエッジを残したいので、ライトをトレペから少し離します。
こうすることで、クッキーの表面に微細な影が落ち、ザクザクとした食感が伝わる写真になります。
「レフ板」ではなく「黒締め」を使え
ここが最大のポイントです。 多くの人は、影が出ると白い板(レフ板)で光を起こして(反射させて)明るくしようとします。 しかし、高級感を出したいなら、逆をやってください。
商品の影になっている側(ライトと反対側、時計で言うと4時〜5時の方向)に、「黒い紙」または「黒いボード」を置きます。 これを業界用語で「黒締め(くろじめ)」と言います。
白レフは光を反射させますが、黒は光を吸収します。 商品の輪郭にある余計な光を黒が吸い取ることで、商品のエッジがキリッと引き締まり、深い陰影が生まれます。
「明るい部分」と「暗い部分」の差(コントラスト)が明確になるほど、商品はリッチに見えます。 マカロンのような丸い物体は特に、この「黒締め」がないと、ただの平べったい円盤に写ってしまいます。
パッケージと中身を両立させる「構図のレイヤー構造」

ライティングが決まったら、次は配置です。 「パッケージも見せたい、中身も見せたい」というジレンマをどう解決するか。
「全部見せたい」という欲を捨てる勇気
パッケージ(箱)と中身(お菓子)を横一列に並べるのはやめましょう。 視線が散らばります。 主役を決めてください。ホワイトデーのお返しで一番重要なのは「中身の美味しさ」なのか、「パッケージの可愛さ」なのか。
もし「中身」なら、箱は背景に徹するべきです。 箱の蓋を開け、その手前に中身のお菓子を数点、ラフに(でも計算して)配置します。 箱のロゴがボケていても、「なんとなく可愛い箱に入っている」ことが伝われば、役割は果たしています。
高さのリズムを作る(アクリルブロックと隠し技)
平面に並べると、どうしてもカタログ的になります。 現場では、商品の下にアクリルブロックや小さな木片を仕込み、高さを変えています。
例えば、奥にあるクッキー缶を3cmほど持ち上げる。 手前のマカロンの一つを、わざと傾けて配置する(裏に練り消しゴムなどを挟んで固定します)。
この「高低差」が写真に奥行きを与えます。
平面的な画像の中に、物理的な奥行き(レイヤー)を作ることで、見る人の視線を手前から奥へとスムーズに誘導できます。
ゴチャゴチャして見えるのは、視線の行き場がないからです。高低差で「ここを見て、次はここ」という道筋を作ってあげてください。
ピント位置で決まる「主役」の座
F値(絞り)の話をしましょう。 全体にピントを合わせようとしてF11やF16まで絞り込んでいませんか? 集合写真ならそれで正解ですが、イメージカットではF4〜F5.6あたりを狙ってください。
一番見せたい「主役のお菓子」の、一番美味しい質感の部分(マカロンならクリームの断面、クッキーなら割れ目)にピントを合わせる。 それ以外(奥の箱やリボン)をなだらかにボカす。
この「ボケ」こそが、情報の取捨選択です。 「ここは見なくていいですよ、ここを見てください」というカメラマンからのメッセージが、ボケには込められています。 これにより、情報量が多くてもゴチャゴチャせず、整理された印象になります。
「自分で撮る」限界と、経営判断としてのアウトソーシング

ここまで、プロの技術をお伝えしました。 「なるほど、黒い紙を置いて、半逆光で、F値を調整して…やってみよう」と思われたかもしれません。
もちろん、社内で試行錯誤することは素晴らしいことです。 しかし、ここで一度、冷静な経営視点を持っていただきたいのです。
1カットに3時間かけられますか?
正直に申し上げます。私がこの「ホワイトデーのギフトセット」を撮る場合、ライティングのセッティングだけで30分、配置の微調整(スタイリング)に1時間、撮影とモニター確認の繰り返しに1時間、その後のレタッチに数時間を費やします。
光の角度を1センチ変えるだけで、パッケージの箔押しの反射が変わり、文字が読めなくなったり、逆に光りすぎたりします。 マカロンの配置を数ミリ動かすだけで、構図のバランスが崩れます。
機材代よりも「試行錯誤の時間」が最大のコスト
カメラやライトを買うお金(イニシャルコスト)は大した問題ではありません。 本当に重いコストは、担当者様が本来やるべき業務(商品開発、販路開拓、顧客対応)を止めて、慣れない撮影に何時間も、何日も費やす「人件費と機会損失」です。
しかも、苦労して撮った写真が、プロが数分で撮ったものに及ばないという現実は残酷ですが存在します。 「餅は餅屋」という言葉がありますが、写真は「時間とクオリティを買う」という判断が、結果的に最もコストパフォーマンスが良いケースが多々あります。
目的に合わせた撮影サービスの使い分け(物撮り.jp / フォトル)

では、どう依頼すればいいのか。 弊社では、お客様の「目的」に合わせて2つの全く異なるサービスを用意しています。これを使い分けるのが、賢い依頼のコツです。
カタログ・ECスペック重視なら「物撮り.jp」

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私たちが徹底したマニュアルと効率化されたスタジオで、迷いのない「正解のカタログ写真」を提供します。
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一方で、今回のテーマである「ホワイトデーのギフト感」や「高級感」を演出し、Instagramや特集ページのトップ画(キービジュアル)として使いたい場合は、「フォトル」が最適解です。
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まとめ
ホワイトデー商戦において、写真は商品の「顔」そのものです。 お客様は味見ができません。写真から伝わる「雰囲気」と「質感」だけで、数千円のギフトを買うかどうか決断します。
- 並べすぎない: 均一な整列は安っぽさの原因。主役を決める。
- 光はサイドから: 半逆光でテクスチャを出し、正面からの光は避ける。
- 黒で締める: レフ板ではなく黒い紙で影を作り、高級感を出す。
- 高低差とボケ: アクリルブロックや絞りの調整で、奥行きと視線誘導を作る。
これらの技術を自社で習得するのも一つの手ですが、商戦期は待ってくれません。 カタログ用の正確な写真は「物撮り.jp」へ。 心を動かすブランド写真は「フォトル」へ。
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