新生活家電の「安っぽさ」と「映り込み」を物理で攻略する。黒物・白物を高級に見せるプロの撮影セッティング公開
目次
こんにちは、株式会社ピックアパートメントの篠原です。 商品撮影の現場一筋で、これまで数え切れないほどの「光る物体」と格闘してきました。
特に家電製品は、形状、素材(光沢、マット、ヘアライン)、そして色(黒・白)によって、毎回異なるライティングパズルを解くような難しさがあります。
「カタログで見たときはかっこよかったのに、実物はチープに見える」なんて言わせない。メーカー様の開発努力を、写真というフィルターを通して120%の魅力に変えるのが私の仕事です。今日はそのパズルの解き方を、少しだけ皆さんにシェアします。
新生活シーズン目前。家電メーカーの担当者様やEC店長の皆様、準備はいかがでしょうか?
一人暮らし向けの炊飯器、電気ケトル、トースター。最近はデザイン性の高い「黒物家電」や、ミニマルな「白物家電」が人気ですね。
しかし、いざこれらを撮影しようとすると、多くの担当者が頭を抱えることになります。 「黒い炊飯器を撮ったら、撮影している私の必死な顔が写り込んでしまった」 「白いケトルを撮ったら、のっぺりして100均のおもちゃみたいに見える」
わかります。家電撮影、特に光沢のある素材(グロス)や無彩色(モノトーン)の撮影は、商品撮影の中で最も難易度が高いジャンルの一つです。
アパレルのようにシワを伸ばせばいいわけではありません。そこにあるのは、純粋な「光の反射」という物理現象だけ。
ごまかしが一切きかないこの被写体を、どうすれば「高級感あふれるプロダクト」として撮れるのか。 今日は、私たちがスタジオで行っている「光のコントロール術」を、物理の授業のようにならない程度に噛み砕いてお話しします。
「映り込み」は消すものではなく、デザインするものです

まず、一番の悩みである「映り込み」について。 艶のある黒い家電を撮ると、部屋の天井、蛍光灯、窓、そしてカメラを構える自分自身がバッチリ写ってしまう。 これを「邪魔なものが写った」と嘆くのは、少し違います。
家電は「鏡」だと思ってください。写っているのは「あなたの部屋」です
光沢のある家電は、光学的には「曲面鏡(カーブミラー)」と同じです。 鏡は、その前にあるものを全て映します。つまり、商品に変なものが写り込んでいるなら、それは「商品の前にある環境が整っていない」ことの証明なのです。
プロのスタジオには、余計なものが一切ありません。壁は黒や白で統一され、窓もありません。 だから、きれいなグラデーションだけを映し込むことができるのです。 オフィスの片隅や自宅のリビングで撮ろうとすれば、当然、エアコンや本棚が写り込みます。 映り込みをなくすには、まず「映り込む対象(部屋の景色)」を物理的に排除するしかありません。
PLフィルターで消せばいい? それ、質感が死にますよ
カメラ好きの方なら「C-PLフィルター(偏光フィルター)を使えば反射を消せるのでは?」と思うかもしれません。 確かに、ガラス越しの撮影や水面の反射を消すのには有効です。
しかし、家電の撮影でPLフィルターを使って反射を完全に消してしまうと、どうなるか。 「マットな黒い塊」になります。 プラスチックや金属特有の「艶感」「硬質感」は、光の反射によって表現されています。 反射を消すということは、その素材感を殺すことと同義です。
高級感を出すために必要なのは、反射を「消す」ことではなく、「きれいな光の帯(ハイライト)」だけを選んで映し込み、それ以外を消すという「引き算」の作業なのです。
黒物家電を「高級」に見せる、光のグラデーション

では、具体的に黒い家電をどう撮るか。 ただライトを当てると、光った点(ホットスポット)ができ、それ以外は真っ黒に潰れてしまいます。
必要なのは「白い光の帯」。トレペ越しのライトでハイライトを描く
黒い曲面になめらかな光沢を与えるには、「面光源」が必要です。 LEDライトの直射は「点光源」なので、これを「面」に変える必要があります。
ここで使うのが、「トレーシングペーパー(トレペ)」や「乳半アクリル板」です。 商品の左側や上部に、大きな枠に貼ったトレペをセットします。そして、そのトレペ越しにライトを照射します。
すると、商品はライトそのものではなく、「光る大きな白い紙(トレペ)」を映し込みます。 これにより、黒いボディに、すっと伸びる美しい白いハイライトが入ります。 このハイライトの形や太さを調整することで、「シャープな印象」や「柔らかな印象」を作り分けるのです。
私たちはこれを「ハイライトを描く」と表現します。
正面からの光は厳禁。サイド光とトップライトで立体感を彫刻する
カメラのすぐ近く(正面)からフラッシュを焚くのは絶対にやめてください。 真正面からの光は、商品を平面的に見せ、さらにカメラレンズの反射を真正面に作ってしまいます。
ライトは基本的に「サイド(横)」や「トップ(上)」、あるいは「半逆光(斜め後ろ)」から当てます。 光と影のコントラストをつけることで、家電の立体的なフォルムが浮き上がります。
特に、操作ボタンやロゴの凹凸を見せたい場合は、光を浅い角度から「舐めるように」当てると、陰影が強調されてかっこよく見えます。
白物家電が「安っぽいプラスチック」に見える理由

次に、白物家電です。 「白背景で白い商品を撮る」。言葉にするだけで難しそうですが、実際難しいです。 一番の失敗は、商品が背景に埋没してしまい、境界線がわからなくなること。そして、質感が飛んでしまうことです。
「白飛ばし」はNG。グレーの階調がリッチさを生む
「白くきれいに見せたい」と思うあまり、露出を上げすぎていませんか? デジタル画像において、明るさが最大値(255)に達すると、そこには何の情報も残りません(白飛び)。 白飛びしたプラスチックは、安っぽく見えます。
高級な白物家電の写真は、よく見ると「明るいグレー」で構成されています。 ハイライト部分だけが純粋な白で、それ以外はうっすらとグレーのグラデーションがついている。 この「わずかなグレーの階調」があるからこそ、我々はそれを「厚みのある物体」として認識できるのです。
ヒストグラムを確認し、白飛び警告が出ないギリギリの明るさ(少し暗めでもOK)で撮影してください。
輪郭が溶けていませんか? 左右を「黒い板」で挟む黒締めの魔法
白背景の中で白い商品の輪郭をくっきりさせるために必須なのが「黒締め(くろじめ)」です。 商品の左右両サイド、カメラに写り込まないギリギリの位置に、黒いケント紙や黒いボード(レフ板の黒面)を立ててください。
これを置くだけで、商品の側面に黒色が映り込み、輪郭に「黒いライン」がうっすらと入ります。 このラインが、商品と背景を明確に分離し、全体を引き締めます。 これがあるかないかで、写真のクオリティは天と地ほど変わります。
「白を撮るために黒を使う」。この逆転の発想がプロの現場の常識です。
撮影者が消える。自宅撮影で使える「光学迷彩」テクニック

さて、最初の課題に戻りましょう。 「撮影している自分が写り込んでしまう問題」です。 鏡のような炊飯器の蓋に、カメラを構えた自分が写っている。これではプロモーション画像としては失格です。
部屋の電気は全消し。撮影用ライト1灯以外は闇にする
映り込みの原因は、「商品に光が当たっているから」ではなく、「映り込む対象物(あなたや部屋)に光が当たっているから」です。 つまり、あなた自身が暗闇にいれば、鏡には映りません。
撮影時は、部屋のシーリングライトや蛍光灯を全て消し、窓のカーテンも閉めて真っ暗にしてください。 そして、商品を照らす撮影用のライトだけを点灯させます。
こうすれば、カメラの後ろ側にいるあなたは暗闇に紛れ、商品には映り込みにくくなります。 「商品を撮る」のではなく「光を撮る」感覚に近づいてきます。
黒い布に穴を開けてレンズを通す。自作「忍者レフ」のススメ
それでも、カメラのレンズや、三脚の銀色の脚がキラッと写り込むことがあります。 これを防ぐ最強のアイテムが、黒い布やボードの真ん中にレンズの大きさの穴を開けたもの。通称「忍者レフ」のようなアイテムです。
これをレンズの前に装着し、カメラと三脚ごと隠してしまいます。 商品側から見ると、そこには黒い闇しかありません。唯一、レンズのガラス面だけが見えている状態。
ここまでやれば、正面から撮っても映り込みはほぼゼロにできます。 段ボールを黒く塗って穴を開けるだけでも効果絶大です。
そのセッティング、毎回30分かけられますか?

ここまで、映り込み対策と質感出しのテクニックをお話ししました。 「なるほど、黒締めをして、部屋を暗くして、トレペで光を作ればいいのか」 理論はそうです。しかし、これを実行するには、かなりの手間と時間が必要です。
ホコリ一本が命取り。レタッチ地獄への入り口
さらに、家電撮影にはもう一つの敵がいます。「ホコリ」です。 黒い光沢ボディについた小さなホコリや指紋は、ライティングで照らすと星空のように目立ちます。 撮影前に手袋をして徹底的に磨き上げ、ブロアーでホコリを飛ばす。
それでも写ってしまったホコリは、Photoshopで一つ一つ消していく必要があります。
この「ホコリ消し」のレタッチ作業、慣れていないと1枚あたり数十分かかります。 5カット撮れば数時間。それが数商品あれば……。
1月の繁忙期、撮影にかける時間を「コスト」として計算していますか?
新生活商戦に向けた1月〜2月は、ただでさえ業務が山積みのはずです。 在庫管理、ページ制作、広告運用、配送手配。 そんな中で、部屋を真っ暗にしてライトを組み、黒い紙をセッティングし、写り込んだ自分を消すレタッチ作業をする。
その時間は、あなたの時給に換算するといくらになりますか?
機材費、スペース代、そして何より「あなたの貴重な時間」。 これらをコストとして計算した時、本当に自社で撮るのが正解でしょうか? ここで、プロに任せるという選択肢が、経営的な「合理性」を帯びてきます。
プロに任せるという「経営判断」

私たちプロは、これまでに述べたセッティングが常設された環境を持っています。 あなたが1時間かけて組むセットを、5分で再現できます。 用途に合わせて、2つのサービスをご用意しています。
【物撮り.jp】Amazon・楽天対応。黒物も白物も「正解」の光で量産する

「ECモール用に、白背景のきれいな商品画像がたくさん必要」 「スペックを正しく伝えるために、色や質感を忠実に再現したい」 「とにかく手間をかけずに、大量の型番商品を処理したい」
そんな場合は、「物撮り.jp」にご依頼ください。 ここでは、映り込みの制御や黒締めといった基本テクニックを、工業的なフローで効率化しています。
どんなに難しい黒物家電でも、熟練のスタッフが最適なライティングを瞬時に組み、ホコリの除去からレタッチまでをスピーディーに行います。 コストパフォーマンス良く、Amazonの規約にも完全対応した「売れるカタログ画像」を納品します。
【フォトル】生活空間に馴染む「憧れ」を撮る。新生活のワクワクを演出

一方で、 「新生活の朝、このケトルでお湯を沸かす幸せなシーンを見せたい」 「おしゃれなインテリアの中に溶け込む、デザイン家電としての魅力を伝えたい」 「SNSで拡散されるような、情緒的な一枚が欲しい」
そうお考えなら、「フォトル」が最適です。 フォトルでは、ハウススタジオやセットを使って、生活空間(ライフスタイル)を作り込みます。 湯気立つコーヒー、朝の光(もちろんライティングで作ります)、そして家電。
単なる「道具」ではなく、生活を豊かにする「パートナー」として、商品の魅力を物語のように切り取ります。
まとめ

家電の商品撮影において、クオリティを左右するのは「光の物理学」への理解と、それを実行するための「環境」です。
- 映り込み対策: 部屋を暗くし、黒い布でカメラごと隠す「光学迷彩」で挑む。
- 黒物家電: トレペで「白い光の帯(ハイライト)」を描き、高級感を出す。
- 白物家電: 露出を抑えてグレーの階調を残し、左右を「黒締め」して輪郭を出す。
- 経営視点: 難易度の高い撮影にかかる時間と労力をコスト換算し、プロへの外注を検討する。
あなたの会社が開発した自信作の家電。 その洗練されたデザインや質感が、写真のせいで「安っぽい」と誤解されてしまうのは、あまりにも勿体無いことです。 技術的な壁を感じたら、ぜひ私たちを頼ってください。 その家電が持つ本来の美しさを、私たちが光で証明してみせます。
カタログスペックを極めるなら「物撮り.jp」。 新生活の夢を描くなら「フォトル」。
どちらのアプローチも、篠原が自信を持って監修しています。 いつでもご相談をお待ちしています。
【ご依頼はこちらから】
▼ 黒物・白物家電の難易度高い撮影もお任せ。EC特化の商品撮影 映り込みゼロ、質感マックスのプロクオリティを、驚きのコストパフォーマンスで。 物撮り.jp に相談する
▼ 新生活のワンシーンを切り取る。ブランドイメージを高める撮影なら スタイリングとモデル撮影で、家電のある「理想の暮らし」を可視化します。 フォトル の詳細を見る