【アパレル撮影】「ピンクがグレーになる」を物理で解決する。春夏物のパステル・シアー素材を正確な色で撮るためのプロの現場術
目次
こんにちは。株式会社ピックアパートメントの篠原です。 商品撮影のカメラマンとして、これまで数万点以上のアパレル商品を撮影してきました。
特に春夏の展示会シーズンになると、多くの担当者様から「淡い色が綺麗に出ない」「透け感が伝わらない」という相談を受けます。
私の仕事は、単にシャッターを切ることではありません。デザイナー様がこだわり抜いた「その色」を、デジタルの世界で劣化させずに、お客様のデバイスまで届けることです。今日は、感覚ではなく「理論」で色を合わせる方法をお伝えします。
アパレル担当者の皆さん、春夏物の立ち上げ準備、進んでいますか?
店頭や展示会ではあんなに輝いていたパステルピンクのブラウスや、エアリーなシアーシャツ。 いざECサイト用に撮影してみると、「あれ? こんなに汚い色だったっけ?」と愕然とした経験、あるはずです。
淡いピンクがドブ川のようなグレーになったり、爽やかなミントグリーンがただの白に見えたり。 「実物はもっと可愛いんです!」とキャプションで叫んだところで、お客様には伝わりません。
そして届いた後に「色が違う」と返品される。この負のループは、春夏の風物詩と言っても過言ではありません。
正直に言います。淡い色の撮影は、黒や原色の撮影よりも10倍難しいです。
しかし、これには明確な「理由」と「解決策」があります。センスの問題ではありません。純粋な光学とカメラの仕様の問題です。
今日は、社内で撮影を担当されている皆さんが、明日から実践できる「色合わせ」の物理テクニックと、プロが現場でどうやってその色を出しているのか、その裏側を包み隠さずお話しします。
パステルカラーが「くすむ」のは、カメラの脳が嘘をつくからです

まず、なぜあなたのカメラは、目の前の可愛いピンクをグレーに変換してしまうのでしょうか。 カメラが壊れているわけではありません。むしろ、カメラが「優秀すぎる」からこそ起きる現象なのです。
カメラは「グレー」がお好き。露出計が陥る18%の罠
カメラに内蔵されている露出計(明るさを測るセンサー)は、基本的に「世の中の平均的な明るさは反射率18%のグレーである」という基準で設計されています。
これがどういうことか。 画面全体が淡いピンク(明るい色)で埋め尽くされると、カメラはこう判断します。 「おっと、ここは明るすぎるぞ。白飛びしてしまうかもしれない。少し暗くして、基準のグレーに近づけよう」
その結果、カメラが勝手に露出を下げて撮影してしまいます。 明るく華やかなパステルカラーが、なんとなく薄暗く、濁ったグレーっぽい色になってしまう元凶はこれです。 カメラの「親切心」が、春夏物においては「余計なお世話」になるのです。
オートホワイトバランス(AWB)は敵。色が「補正」されてしまう悲劇
もう一つの敵が「オートホワイトバランス(AWB)」です。 AWBは、光源の色被りを補正して、白いものを白く写そうとする機能です。
しかし、画面全体が薄いベージュやピンクの場合、カメラはそれを「夕焼けの赤みがかぶっている」や「電球の色がついている」と勘違いすることがあります。
その結果、その赤みを打ち消そうとして、反対色である「青」や「緑(シアン)」のフィルターをデジタル的にかけてしまうのです。
淡いピンクに、薄いシアンを混ぜるとどうなるか? 絵の具を想像してください。色が濁りますよね。これが「色がくすむ」の正体です。 アパレル撮影において、AWBは今すぐOFFにしてください。
淡い色を「見たまま」に撮るための物理的アプローチ

原因がわかれば、対策は打てます。 カメラの自動機能に頼らず、物理的に「正解」を教えてあげればいいのです。
「白」を基準にするな。「グレーカード」こそが色の命綱
「白い紙でホワイトバランスを合わせている」という方、惜しいです。 白い紙は、漂白剤の蛍光成分が含まれていたり、実は少し青かったりすることが多く、厳密な基準にはなりません。
プロの現場では、必ず「銀一(GIN-ICHI)などの標準グレーカード」を使います。 撮影を始める前に、照明の下でこのグレーカードを画面いっぱいに写し、カメラの「カスタムホワイトバランス」機能で基準を取り込みます。
これにより、カメラは「この照明下では、これが色のないニュートラルなグレーなんだな」と理解します。 この基準さえセットできていれば、その後にどんな淡い色の服を撮っても、カメラが勝手に色を補正することはありません。
Amazonで数千円で買えます。この一枚のカードが、あなたの会社の返品率を劇的に下げます。
色被りを防ぐ「演色性(Ra)」という数値を無視していませんか?
照明機材についても触れておきましょう。 「明るければなんでもいい」と、オフィスの蛍光灯や、安いLEDライトを使っていませんか?
照明には「演色性(Ra)」というスペックがあります。 太陽光をRa100としたとき、そのライトがどれだけ正確に色を再現できるかという数値です。
一般的な蛍光灯はRa60〜70程度。これでは、どんなにカメラを設定しても、そもそも「光の中に色の成分が足りていない」ため、正しい色は出ません。特に赤や肌色がくすみます。
商品撮影をするなら、最低でもRa90以上、できればRa95以上の高演色LEDライトを使ってください。 光の質が悪ければ、Photoshopでも救えません。
ヒストグラムの「右側」を使え。白飛びギリギリを攻める露出設定
先ほど、カメラは明るいものを暗く写そうとすると言いました。 これに対抗するには、露出補正をプラス(+1.0 〜 +1.5EV)に設定する必要があります。
カメラの背面液晶に「ヒストグラム(山の形をしたグラフ)」を表示させてください。 パステルカラーを撮る場合、この山がグラフの真ん中ではなく、「右側の壁ギリギリ」に寄っている状態が正解です。
「白飛びしそう?」と怖がるくらいでちょうどいい。 デジタルの特性上、暗く撮って後で明るく持ち上げるよりも、最初から明るく撮っておくほうが、色の階調(グラデーション)がきれいに残ります。これを「向かって右に露光する(Expose to the Right)」テクニックと呼びます。
春夏特有の「透け感(シアー)」を美しく撮るライティング術

色の次は「素材感」です。 シアーシャツやチュールスカート。これを床やテーブルに平置きして撮ると、ただの「くしゃくしゃの布」に見えてしまいます。
平置きでペタリはNG。光を「通す」ための空間作り
透ける素材の魅力は、光が通り抜けた時の「軽やかさ」にあります。 平置きすると、下の床や背景紙の色が透けて混ざってしまい、透明感が死んでしまいます。
基本は「吊り撮影」か「トルソー(マネキン)」です。 背景と商品の間に、少なくとも1メートル以上の空間を作ってください。 そして、背景用のライトを強めに当てて、背景を白く飛ばします。
そうすると、商品越しに背景の強い光が入ってきて、生地が透けて見え、ふんわりとした質感が浮かび上がります。
逆光は怖くない。輪郭を際立たせる「エッジライト」の魔術
さらにプロっぽい写真を撮るなら、斜め後ろからのライト(半逆光)を追加してください。 商品の真後ろではなく、斜め後ろ45度くらいの位置から、商品に向けてライトを当てます。
すると、服の輪郭(エッジ)や、ギャザーの山部分が光り輝きます。 このハイライトが入ることで、「ああ、これは薄くて軽い素材なんだな」と脳が直感的に理解できるのです。 正面から光を当てるだけでは、この立体感は絶対に出ません。
アクリル板の下から光を。透過光で繊維の表情を描き出す
どうしても平置きで撮らなければならない場合(例えば置き画コーデなど)。 その場合は、透明または乳半のアクリル板の上に商品を置き、アクリル板の下からライトを当ててください。
下からの光が生地を透過し、織り目や繊維の表情を鮮明に映し出します。 レントゲン写真のようなイメージです。これにより、平置きでも「透け感」を表現することが可能になります。 少し大掛かりなセットになりますが、シアー素材を扱うなら必須のテクニックです。
編集ソフトに頼る前に。モニターの色、本当に合っていますか?


撮影が終わって、いざPCで確認。「あれ? カメラの液晶で見た時と色が違う」。 これはPCのモニターが原因である可能性が高いです。
sRGBとAdobeRGB。色空間の設定ミスが招く不一致
デジカメの設定が「AdobeRGB」になっていて、Web用の書き出し設定が「sRGB」に変換されていない、あるいはその逆。 この設定がズレていると、色は大きく変わります。
Webで販売する以上、最終出力は「sRGB」でなければなりません。 撮影段階からカメラの設定をsRGBにしておくか、RAW現像時に確実にsRGBへ変換するフローを確立してください。
キャリブレーションツールなしの「目視合わせ」は経営リスク
「自分のPCの画面を、自分の目で見て調整する」。これは非常に危険です。 人間の目は環境光に順応してしまうため、夕方のオフィスと昼間のオフィスでは、色の見え方が変わります。
また、一般的な事務用モニターは、青みが強く、コントラストが高めに設定されていることが多いです。
そのモニターで「いい感じのピンク」に調整した画像は、正しい色のモニター(例えばiPhoneなど)で見ると、「黄色っぽくて眠たい画像」になっているかもしれません。
「キャリブレーションツール」を使って、モニターの色を定期的に矯正する。 これができていない環境での「色合わせ」は、目隠しをしてダーツを投げるようなものです。
「色が違う」というクレームは、利益を直接溶かします

ここまでテクニカルな話をしてきましたが、なぜここまで色にこだわる必要があるのでしょうか。
返品送料だけじゃない。ブランドへの不信感が一番の損失
「イメージと違う」という理由での返品。 往復の送料、検品の手間、再販のためのプレス作業。これだけで数千円のコストが消えます。
しかし、もっと怖いのは「この店写真は盛ってるから信用できない」というレッテルを貼られることです。
一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。 逆に、「写真通りのきれいな色だった!」というレビューは、迷っている他のお客様の背中を押す最強の武器になります。
その「色合わせ」の時間、時給換算でいくらですか?
ここまで読んで、「正直、そこまで機材も環境も揃えられない」と感じた方もいるでしょう。 グレーカードでWBを合わせ、照明を組み、モニターをキャリブレーションし、一枚一枚現像する。 慣れないスタッフがやれば、1商品の色合わせに30分、1時間とかかることもザラです。
もし春夏の新作が50型あったら? 100型あったら? その膨大な時間は、本来なら「売るための施策」や「次の企画」に使うべき時間ではないでしょうか。
ここで、私たちのようなプロに任せるという選択肢が出てきます。 用途に合わせて、2つの解決策をご用意しています。
プロに任せるという選択肢。それは「正確さ」を買うこと

【物撮り.jp】徹底した色管理で、大量のSKUも均一に仕上げる

「とにかく商品数が多い」 「ECモール用に、正確な色とディテールの白背景写真が必要」 「カラーバリエーションを並べた時に、色がバラバラになるのを防ぎたい」
そんなEC担当者様には、「物撮り.jp」が最適です。 私たちは、工業的なレベルで管理された照明環境を持っています。
すべての撮影ブースで演色性Ra95以上の光源を使用し、カラーマネジメントされたフローで撮影・現像を行います。 淡いピンクも、シアーな素材も、熟練のカメラマンが「素材に合わせたライティング」で、質感を正確に描写します。
商品を箱に詰めて送るだけ。 あなたは、色の調整という終わりのない迷路から解放され、上がってきた「正解のデータ」をアップロードするだけです。 コストパフォーマンスとスピードを最優先するなら、こちらをお選びください。
【フォトル】着用シーンで「空気感」ごと伝えるリッチコンテンツ

一方で、 「平置きだけでは、透け感やドレープの美しさが伝わらない」 「ブランドの世界観として、春らしい空気感のある写真が欲しい」 「実際に人が着た時の、肌との馴染み方を見せたい」
そうお考えなら、「フォトル」にお任せください。 ここでは、プロのスタイリストとカメラマンがチームを組み、着用画像やイメージカットを作り上げます。
人物が入ることで、シアー素材の透け感はよりリアルに伝わりますし、ポージングによって生まれる生地の動きは、静止画でありながら動画のような情報を伝えます。
もちろん、ここでも色の管理は徹底しています。 「雰囲気」を重視しながらも、商品の「色」は嘘をつかない。 その絶妙なバランスを、プロの技術で形にします。
まとめ


春夏物のアパレル撮影、特に色合わせと素材感の表現は、物理的な知識と適切な環境がなければ攻略できません。
- グレーカードと露出補正: カメラの自動制御を信じず、物理的な基準を与える。
- ライティング: シアー素材は「透過光」と「エッジライト」で立体感を出す。
- カラーマネジメント: モニター環境を整え、sRGBで管理する。
- 経営判断: 色調整にかかる膨大な時間をコストとして捉え、プロへの外注を検討する。
「たかが写真、されど写真」。 画面越しにしか商品に触れられないお客様にとって、その画像は商品の全てです。 自信を持って送り出した春の新作が、写真のせいで評価を下げることのないように。
正確なカタログカットが必要なら「物撮り.jp」。 魅力的な着用イメージが必要なら「フォトル」。
あなたのブランドの大切な商品を、私たちプロの目で、光で、守らせてください。 いつでもご相談をお待ちしています。
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