ガラス瓶の撮影で「写り込み」に勝つ。プロが現場でやっている、透明な被写体を支配する黒と白の魔術
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株式会社ピックアパートメントの篠原です。
飲料メーカーの広報さんや、香水ブランドを立ち上げたばかりの方から、本当によく相談されます。
「ボトルを撮ると、どうしてもカメラを構えた自分が写ってしまう」 「部屋の蛍光灯や窓枠が写り込んで、商品が安っぽく見える」
わかります。その悩み、痛いほどわかります。
ガラス、アクリル、そして金属。これら「光を反射する素材」は、商品撮影において最も難易度が高い被写体です。カメラの設定をどれだけいじっても解決しません。
なぜなら、これはカメラの問題ではなく、「空間と物理」の問題だからです。
今日は、私が現場でガラス瓶と対峙する時、どのようにして「透明で美しいボトル」を削り出しているのか。その物理的なトリックを包み隠さずお話しします。
ガラス瓶の「写り込み」を消す魔法はありません。あるのは「物理」だけです。

なぜあなたの顔がボトルに写るのか?「凸面鏡」の罠
まず、残酷な事実をお伝えします。
ガラス瓶の表面は、カーブしていますよね? あれは物理的に言うと「広角レンズがついた鏡(凸面鏡)」と同じです。
カーブミラーを想像してください。あれは交差点全体を映すために丸まっています。
あなたの商品のボトルも同じ。つまり、ボトルの前にある部屋の景色、機材、そしてあなた自身を、360度近い角度で拾い集めて映し出しているのです。
これを「写り込まないようにする」のは、鏡の前に立って「私の姿を映すな」と念じるようなもの。不可能です。
「消す」のではなく「映っていいものだけを映す」という発想転換
では、プロはどうしているのか。 私たちは写り込みを「消して」はいません。「映ってもいいもの」に置き換えているのです。
映ってもいいものとは何か? それは「純粋な光(白)」か「純粋な闇(黒)」のどちらかです。 部屋のエアコンや散らかったデスクを、真っ白な紙や真っ黒な布の反射に置き換えてしまう。これが、ガラス撮影の唯一の攻略法です。
現場の常識「写り込み」を支配する3つの物理的アプローチ

「なんだ、簡単なことか」と思いましたか? いえ、ここからが泥臭い戦いの始まりです。具体的な手順を解説しましょう。
手順1:部屋の電気を消して「闇」を作るのがスタートライン
まず、撮影している部屋の照明(シーリングライトなど)を全て消してください。昼間なら遮光カーテンを閉めます。 部屋を真っ暗にする。これが絶対条件です。
なぜか? 部屋の明かりがついている限り、その光は制御不能な「雑音」としてボトルの表面に映り込みます。
私たちが使うストロボや定常光ライト以外の光を、一切入れない。「光の引き算」を徹底することで、初めて計算通りの反射を作ることができます。
手順2:トレペで「光の結界」を張る(自作ディフューズボックスの極意)
次に必要なのが、トレーシングペーパー(以下、トレペ)です。 商品を囲むように、トレペで四角い壁、あるいはドームを作ります。商品の左右、上、奥、すべてを白い紙で覆うのです。
こうすると、ボトルは「部屋」ではなく「白い紙」を映し返します。 照明(ライト)はこのトレペの外から当てます。
すると、ライトの光がトレペで拡散され、柔らかく美しいグラデーションの「白い映り込み(ハイライト)」に変わります。 あの化粧品のポスターのような、滑らかに走る白いラインは、こうして「映り込ませて」作っているのです。
手順3:カメラマン自身が「黒子」になる(レンズ穴ボードの作成)
トレペで囲っても、一つだけ穴が開いていますよね? そう、あなたがカメラを構えている「正面」です。ここから、あなた自身が写り込みます。
これを防ぐために、私たちは「レンズの穴だけ開けた黒(または白)のボード」を使います。 ウレタンボードやカポックの中心に丸い穴を開け、そこからレンズだけを覗かせて撮影するのです。
これで、ボトルから見た世界は「真っ白な壁と、中心にある小さな黒い点(レンズ)」だけになります。 ここまでやって初めて、あの「何も写っていないクリアなボトル」が完成します。
「黒締め」と「白締め」…ボトルの輪郭を削り出すプロの技

ここからさらに一歩踏み込みます。単に写り込みを消すだけでは、ボトルは「のっぺり」します。 立体感を出すために必須なのが「黒締め(くろじめ)」という技術です。
透明な液体を「黒ケント紙」で挟むと何が起きるか
透明なガラス瓶を白い背景で撮ると、瓶の輪郭が背景に溶け込んでしまい、境界線が曖昧になりがちです。 そこで、ボトルの左右真横(カメラから見て死角になるギリギリの位置)に、細長く切った「黒ケント紙」を立てます。
すると、ガラスの側面がこの黒い紙を反射し、ボトルの輪郭にキリッとした「黒いライン」が入ります。これが「黒締め」です。
この黒いラインが入ることで、ボトルは背景から切り離され、圧倒的な立体感と高級感を纏います。香水や高級飲料の撮影では必須のテクニックです。
エッジが消える?背景に溶け込ませないための「白黒の配置」
逆に、濃い色のボトルや黒背景で撮影する場合は、白い紙を置いて輪郭を明るく起こす「白締め」を行います。
この黒締め・白締めの配置は、ミリ単位の調整が必要です。 紙をボトルに近づければラインは太くなり、遠ざければ細くなる。 少しでも左右の位置がズレれば、ボトルの形が歪んで見えます。
ファインダーを覗きながら、アシスタントに「右の紙、あと2ミリ奥!」と叫ぶ。そんな地味な微調整の繰り返しが、プロの現場です。
その撮影セット、毎回組んで片付けますか?

さて、ここまで読んで「よし、やってみよう」と思ったチャレンジャーなあなたへ。 最後に、コストの話をさせてください。
1カットのために「簡易スタジオ」を建設する見えないコスト
上記の手順を実行するには、実質的に「部屋の中に小さなスタジオを建設する」のと同じ労力がかかります。 トレペを吊るスタンド、黒ケント紙を固定するクリップ、レンズ穴を開けたボードの工作、そして遮光。
これらを準備し、セッティングし、微調整して1枚撮る。そしてまた片付ける。 慣れていない人がやれば、準備だけで1〜2時間は優に飛んでいくでしょう。
ホコリと指紋との終わらない戦い(レタッチ地獄の入り口)
さらに最大の敵がいます。「ホコリ」と「指紋」です。 強い光を当てたガラス瓶は、肉眼では見えない微細なホコリまで克明に写し出します。黒締めをすればするほど、表面の指紋や汚れが浮き彫りになります。
撮影前の徹底的な拭き上げ。 それでも写ってしまったホコリを消すための、撮影後のPhotoshop作業。
実は、撮影時間以上に、この「クリーニングとレタッチ」に膨大な時間を食われます。 「社内で撮ればタダ」だと思っていませんか? あなたの時給換算で数万円分の時間が、ホコリ取りに消えているかもしれません。
「自社でやる」が「安上がり」とは限らない経営的な理由
機材費、セッティングの手間、場所の確保、そしてレタッチの時間。これらをトータルで考えた時、果たして自社撮影は合理的でしょうか?
もしあなたが、商品開発やマーケティングといった「コア業務」に集中したいのであれば、撮影という「特殊技能」は外部に出すのが正解です。
「物撮り.jp」で、透明なボトルを透き通ったまま届ける

もし、ECサイトやカタログのために、「正確で」「清潔感があり」「大量の」商品写真が必要なら、迷わず「物撮り.jp」をご利用ください。
私たちが提供するのは、単なる写真撮影代行ではありません。「クオリティの均一化」です。 熟練のスタッフが、今日お話しした「トレペの囲い」や「黒締め」のセッティングを完璧に組み上げ、流れ作業で効率よく撮影します。
- 写り込み完全除去: カメラマンも部屋も写らない、純粋な商品画像。
- 正確な色と質感: 熟練のライティングで、液体の色味を忠実に再現。
- 圧倒的なコストパフォーマンス: システム化されたフローで、あなたが1日かけて撮る量を、短時間かつ低コストで納品します。
特にSKU(商品数)が多い場合、自社での撮影は現実的ではありません。「餅は餅屋」に任せるのが、最も賢い経営判断です。
「フォトル」で、香りのイメージすら写し撮る

一方で、もしあなたが求めているのが、Instagramのフィードを飾るような「世界観」のある写真なら、「フォトル」にご相談ください。
ここでは、「写り込みを消す」だけでなく、「あえて魅力的に反射させる」テクニックを使います。
- スタイリング重視: ボトルの周りに果実やハーブを配置したり、水滴を演出したりして、香りを視覚化します。
- リッチなライティング: 影を意図的に作り、ドラマチックな雰囲気を演出。ブランドの高級感を底上げします。
- SNS特化: スマホの画面で見た時に、思わずタップしたくなる「強さ」のあるクリエイティブを提供します。
単なる商品写真を超えた、「売れるためのビジュアル」が必要なら、こちらが最適解です。
まとめ
ガラス瓶の撮影における「写り込み」は、消すものではなく、物理的にコントロールするものです。
- 環境: 部屋を真っ暗にし、余計な光を遮断する。
- 囲い: トレペでドームを作り、映り込む世界を「白」にする。
- 黒締め: 黒ケント紙を配置し、ボトルの輪郭を削り出す。
- 隠れる: レンズ穴を開けたボードで、カメラマン自身も消える。
この工程を、ホコリと戦いながら毎回行う労力。それを「コスト」として捉えられるあなたなら、プロに依頼する価値がわかるはずです。
私たちは、あなたのボトルが持つ輝きを、1ミリの曇りもなく写真に収める準備ができています。
いつでもスタジオでお待ちしております。

