【家電撮影の極意】新生活商戦、Amazon・楽天で選ばれる「白背景」写真はこう撮る。写り込み対策と効率化の現場論
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こんにちは、カメラマンの篠原です。
新生活に向けた家電製品。白物家電と呼ばれるように、多くの製品は「白」か「黒」、あるいは「金属質のシルバー」です。これらをECサイト用に白背景で撮影する際、最大の敵となるのが「写り込み(映り込み)」です。
結論から言います。 ツルツルした家電の表面に写っているのは、ただの光ではありません。「撮影しているその場所の景色そのもの」です。
これを解決するには、Photoshopでこねくり回すのではなく、「写ってもいい環境を作る」しかありません。写り込みは消すものではなく、コントロールするものなのです。
今日はその具体的な手法を、包み隠さずお話しします。
「ただ白いだけ」では伝わらない。家電撮影が陥る3つの沼

社内で撮影を始めた担当者さんが、最初にぶつかる壁。それが「肉眼で見ている商品と、写真の中の商品が別物に見える」という現象です。
なぜそんなことが起きるのでしょうか?
写り込みの正体は「部屋の景色」。自分自身が映る恐怖
例えば、黒くて光沢のあるコーヒーメーカーを撮影するとします。出来上がった写真を見て、「あれ、なんか変な色が混じってる?」と思ったことはありませんか? よく拡大して見てください。そこには、撮影している担当者さんの顔や、着ている服の色、会議室の蛍光灯、窓枠などがくっきりと写っているはずです。
表面が滑らかな素材(プラスチック、ガラス、金属)は、周囲の光を反射します。カメラのレンズ側から見えているのは、商品の色そのものではなく、商品の表面が反射している「部屋の景色」なのです。 つまり、生活感のあるオフィスで撮れば、その生活感がそのまま商品の表面にプリントされてしまう。これでは、どんなに高性能な家電でも安っぽく見えてしまいます。
白いボディが白背景に溶けてしまう「境界線消失」
次に多いのが「白い炊飯器を白い背景紙の上で撮ったら、どこまでが商品かわからなくなった」というケースです。 Amazonや楽天のガイドラインに従って背景を「完全な白(RGB 255,255,255)」に飛ばそうと照明を強くすると、商品の白いフチまで光で飛んでしまい、背景と同化します。
逆に、商品の輪郭を残そうとして照明を暗くすると、今度は全体がグレーっぽく薄暗くなり、清潔感が失われます。「白」の中に「別の白」を存在させる。これは実は、色彩学的に非常にデリケートな作業なのです。
質感が見えない「のっぺり画像」の悲劇
写り込みを怖がるあまり、真正面からフラッシュをバシッと当ててしまう。これもよくある失敗です。 これをやると、商品の立体感が完全に消え失せます。ボタンの凹凸も、素材のヘアライン加工もすべて光で塗りつぶされ、まるで2次元のイラストのような「のっぺり」した画像になってしまいます。
スペック重視のECサイトにおいて、質感が見えないというのは致命的です。お客様は写真から「手触り」や「重厚感」を想像し、購入ボタンを押すのですから。
現場直伝。写り込みを制圧し、質感を出す具体的テクニック

では、私たちプロは現場でどうやってこの問題をクリアしているのか。魔法を使っているわけではありません。物理と光学の法則に従って、地道にセッティングを組んでいるだけです。
光を回すのではない、「面」を作る。アートレとディフューザーの活用
家電撮影において、小さなライトを直接当てるのは厳禁です。点光源は、商品に小さな「点」として写り込み、目障りなハイライトを作ります。
必要なのは、「面光源」です。 私たちは、トレーシングペーパー(通称:トレペ)や、アートレと呼ばれる乳白色のフィルムを使用します。照明機材の前に、大きな枠に貼ったトレペを垂らし、そこに光を透過させます。
こうすることで、光は「点」ではなく、大きく柔らかな「面」となって商品に降り注ぎます。商品の表面に写り込むのは、柔らかな白いグラデーションだけ。これこそが、家電特有の「高級感のある光沢」の正体です。 場合によっては、商品の左右、上部をトレペで囲い、テントのような状態を作ります。これで部屋の景色を完全に遮断し、「写ってもいい白」だけを写り込ませるのです。
輪郭を彫刻する「黒締め(くろじめ)」の魔術
先ほど「白い商品が背景に溶ける」という話をしました。これを防ぐ最強のテクニックが「黒締め(くろじめ)」です。
方法はシンプルかつ原始的です。商品の見えない位置(ギリギリ外側)に、黒いケント紙や黒いボード(黒レフ)を配置します。 するとどうなるか。 商品の「フチ」の部分に、置いてある黒いボードが写り込みます。白一色の世界に、細くシャープな黒いラインが生まれ、それが商品の輪郭(エッジ)をくっきりと描き出します。
この黒いラインがあるかないかで、商品の立体感は劇的に変わります。ぼんやりとした白い塊が、カチッとした工業製品として立ち上がってくる瞬間。何度やっても気持ちの良いものです。
歪みを許さない。焦点距離とF値の最適解
機材の設定にも触れておきましょう。 スマホや広角レンズ(焦点距離24mm-35mm程度)で家電を撮ると、手前が大きく、奥が小さく写る「パース(遠近感)」が強くつきすぎてしまいます。四角い電子レンジが台形に見えたり、冷蔵庫が歪んで見えたりしては、正確な形状が伝わりません。
私たちは通常、焦点距離80mm〜100mm程度の中望遠レンズを使用します。離れた位置からズームで狙うことで、形を歪ませることなく、見たままの形状で捉えることができます。
また、絞り(F値)も重要です。背景をボカす必要はありません。商品の前面から奥のスイッチまで、すべてにピントが合っている必要があります。そのため、F11〜F16くらいまでしっかりと絞り込みます。 絞れば絞るほど光が必要になりますが、そこは業務用の大光量ストロボでカバーします。ここが、一般的なオフィス照明では太刀打ちできない壁でもあります。
「社内で撮る」ことの隠れたコストと限界

さて、ここまでテクニックをお話ししましたが、「なるほど、じゃあトレペと黒ケント紙を買ってきて社内でやろう」と思われたかもしれません。 しかし、現場のプロとして忠告させてください。 新生活商戦に向けて「大量の商品」を撮る場合、社内撮影は経営的に見てリスクが高い可能性があります。
1カット15分?セットチェンジという泥沼
白背景のセッティングは、一度決まれば終わりではありません。 炊飯器の次は、縦長のスティック掃除機。その次は透明なガラスのケトル。 商品の大きさ、素材、形が変わるたびに、ライトの位置、トレペの角度、黒締めの配置、すべてをゼロから組み直す必要があります。
慣れていない方がやると、1つの商品のセッティングに30分〜1時間かかることもザラです。仮に1カット15分で撮れたとしても、50商品あれば単純計算で12時間以上。準備や片付けを含めれば数日仕事です。 その間、本来の業務であるマーケティングや企画の手は止まってしまいます。
レタッチ地獄。ホコリと指紋との終わらない戦い
撮影後のデータを見て絶望するのが「ホコリ」と「指紋」です。 高解像度のカメラは、肉眼では見えない微細なホコリまで残酷に写し撮ります。特に黒い家電や光沢のある画面では、星空のようにホコリが輝きます。
これをPhotoshopで一つ一つ消していく作業(レタッチ)。これは精神を削る苦行です。 「撮影は半日で終わったけど、画像処理に1週間かかった」という話は、決して笑い話ではありません。プロは撮影前の清掃(ダスティング)に命をかけますが、それでもレタッチ専門のスタッフと連携してスピードを担保しています。
機材代だけではない、占有スペースと人手の圧迫
本格的なライティングを組むには、最低でも6畳、できれば10畳以上のスペースが必要です。そこにスタンドを立て、配線を這わせる。 繁忙期に会議室を何日も占拠することは可能でしょうか? また、撮影担当者が風邪で休んだら? 誰がそのセッティングを再現できるでしょうか? 社内撮影は「見えないコスト」の塊なのです。
外部委託は「コスト削減」である。プロに任せる合理的選択

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。 テクニックを知れば知るほど、「これは片手間でやるべきではない」とお気づきになったのではないでしょうか。
餅は餅屋。写真は写真屋。 外部に依頼することは、単なる外注ではなく、「クオリティの担保」と「時間の購入」です。 株式会社ピックアパートメントでは、皆様のニーズに合わせて2つの特化型サービスをご用意しています。
【物撮り.jp】スペック重視・大量撮影の最適解
もし今、あなたが求めているのが、 「Amazonや楽天のカタログ用に、白背景の商品写真が大量に欲しい」 「とにかく正確に、スペックが伝わる写真を、早く安く揃えたい」 ということであれば、「物撮り.jp」が最適解です。
- EC特化のワークフロー: 白背景撮影に特化したスタジオラインを完備しており、驚くべきスピードで大量の商品をさばきます。
- 1カット単位の明朗会計: コスト計算がしやすく、無駄がありません。
- プロの技術を標準装備: 先ほど説明した「黒締め」や「写り込み対策」は、我々にとっては息をするのと同じ標準スキル。何も言わなくても、カチッとした清潔感のある写真が上がってきます。
新生活商戦、数百点の商品登録が待っているなら、迷わずこちらを選んでください。社内で悩んでいる時間のコストで、すべてのお釣りが来ます。
【フォトル】ブランドの世界観を創るクリエイティブ
一方で、 「トップページにドーンと載せる、ブランドイメージを決定づける1枚が欲しい」 「新生活のワクワク感が伝わるような、部屋のセットで撮影したい」 というご要望であれば、「フォトル」にご相談ください。
- ブランドイメージを具現化: 単なる記録写真ではなく、「その家電がある生活」を想起させるビジュアルを作り上げます。
- スタイリングと演出: 専属のスタイリストやコーディネーターが、小物や背景を作り込み、ターゲット層に刺さるシーンを演出します。
- モデル起用も可能: 実際に人が使っているシーンを入れることで、サイズ感や使用感を直感的に伝えます。
スペックで比較される段階を超え、「このブランドが好きだ」と思わせるための写真は、こちらで丁寧に作り込みます。
まとめ
最後に、今回のポイントを現場目線で整理します。
- 写り込みは「部屋の景色」: 撮影環境を整えない限り、Photoshopだけでは解決しない。
- 面光源と黒締め: トレペで光を回し、黒い紙で輪郭を描く。これが家電撮影の基本にして奥義。
- 社内撮影のリスク: セットチェンジの手間、レタッチの膨大な時間、スペースの占有は、見えないコストとして経営を圧迫する。
- 使い分けの戦略: 大量・カタログスペック重視なら「物撮り.jp」。ブランド・シーン訴求なら「フォトル」。
新生活商戦はスピード勝負です。 撮影という「専門技術」は私たちプロにお預けいただき、皆様は「商品をどう広めるか」という本来の戦略業務に全力を注いでください。 それが、最も合理的で、勝率の高い戦い方だと私は信じています。




