バレンタイン商戦の落とし穴。「高級チョコ」が「安っぽいプラスチック」に見える物理的な理由
「実物はこんなに美味しそうなのに、写真で見るとコンビニのチョコより安っぽく見える」 そんな経験、ありませんか?
実はこれ、カメラの性能のせいではありません。原因の9割は「光の質」にあります。
原因は「カメラ」ではない。「光の硬さ」と「角度」のミスマッチ
チョコレートの魅力は、あの滑らかな光沢(ツヤ)と、口どけを想像させる湿度感です。 しかし、多くの方がやってしまうのが、部屋の照明や、撮影用の簡易ライトを「そのまま」商品に向けてしまうこと。
光源が小さい、あるいは商品との距離が近いと、光は「硬く」なります。 硬い光がチョコレートの曲面に当たるとどうなるか。ハイライト(光が反射している白い部分)が「点」になってしまうんです。 ビカッとした鋭い光の点は、人間の脳に「これは硬くて無機質な物質(=プラスチック)」という信号を送ります。これが、高級感が消える最大の原因です。
私たちが撮影するときは、ハイライトを「点」ではなく、滑らかな「グラデーション」として写し込みます。これだけで、脳は「しっとりとした質感」を感じ取るようになるんです。
チョコレートの「黒」は、実は黒く写してはいけない
もう一つの失敗要因は「露出(明るさ)」の判断ミスです。 ダークチョコレートやガトーショコラは黒いですよね。カメラのオート機能は「画面が暗い」と判断し、勝手に明るく補正しようとします。
その結果、深みのある黒色が、白っぽく浮いたグレーになってしまう。これでは濃厚な味わいが伝わりません。
逆に、黒を黒くしようと露出を下げすぎると、今度は「黒つぶれ」を起こし、ただの黒い塊になります。 「ハイライトのエッジを残しつつ、シャドウの中にわずかな階調(ディテール)を残す」 このギリギリのバランスこそが、高級感の正体です。
これをオート撮影で実現するのは、正直、至難の業だと言わざるを得ません。
プロの現場テクニック。「シズル感」と「高級感」を演出する具体的な手順

では、篠原流の解決策を具体的にお伝えします。機材がないと難しい部分もありますが、理屈を知るだけで写真は変わります。
【ライティング】照明直当ては厳禁。「トレーシングペーパー2枚重ね」の法則
私がチョコレートを撮る際、ライトを直接当てることは万に一つもありえません。 必ず、ライトと商品の間に「ディフューザー(拡散材)」を挟みます。
現場でよくやるのは、アートレ(トレーシングペーパーのような紙)を2枚、間隔を空けて配置する手法です。 1枚目で光を拡散させ、2枚目でさらに柔らかくする。そして、その巨大な面光源を、商品の「真上」ではなく「斜め後ろ(半逆光)」から当てます。
こうすることで、チョコレートのエッジに柔らかいハイライトが入り、立体感が生まれます。 もし社内で撮影するなら、100円ショップのトレーシングペーパーでも構いません。ライトの前にくしゃくしゃにせず、ピンと張って設置してみてください。光源の面積が大きくなればなるほど、光は柔らかく、高級な質感に変わります。
【反射制御】パッケージの金箔・銀箔が真っ暗になる現象の防ぎ方
バレンタイン商品は、パッケージに金や銀の箔押しが使われることが多いですよね。 これを真正面から撮ると、金色の部分が真っ黒に写りませんか? これは「正反射」の原理です。カメラのある位置に光が跳ね返ってきていないから、黒く見えるのです。
解決策は、物理的に「映り込ませるもの」を作ること。 私はよく、金箔の角度に合わせて「白いレフ板(白い紙でも可)」を意図的に配置します。金箔がその白い紙を反射することで、初めてキラッと輝いて見えるようになります。 逆に、余計なものが映り込んで安っぽくなる場合は、「黒締め」といって、黒い紙で周囲を覆い、余計な光をカットします。
この「白で起こして、黒で締める」という作業を、数ミリ単位で調整する。これが物撮りの現場のリアルです。
【スタイリング】「足し算」で失敗する。「引き算」と「質感の対比」で作る世界観
「おしゃれにしたい」と思うあまり、赤いリボン、英字新聞、ドライフラワーなどを無造作に散りばめていませんか? 厳しいことを言いますが、主役が埋もれて逆効果になっているケースが大半です。
おしゃれな写真の鉄則は「引き算」です。 背景には、チョコレートのツヤを引き立てるために、あえて「マット(つや消し)」な素材を選びます。例えば、荒い目の木材や、スレート(石板)、上質なリネンなどです。 「ツヤ × マット」の対比を作ることで、チョコレートの存在感が際立ちます。
また、小物を使うなら「同系色」でまとめるのがセオリー。 チョコレートが茶色なら、背景はベージュや焦げ茶。アクセントカラーは1色まで。 私が担当するなら、余計な装飾は極力排除し、チョコレートを割った時の「断面」や、ココアパウダーが落ちている「粉感」など、商品そのものが持つテクスチャで勝負します。その方が、圧倒的に美味しそうに見えるからです。
スマホ撮影の限界と、自社撮影に潜む「見えないコスト」

ここまでテクニックをお話ししましたが、これを社内で再現しようとすると、想像以上の壁にぶつかります。
1カットに3時間?担当者が抱える「時間の浪費」というリスク
照明をセットし、トレーシングペーパーを張り、レフ板を数ミリ単位で調整する。 慣れていない方がこれをやると、1カット撮るのに平気で2〜3時間はかかります。 しかも、撮影後の「現像(色調整)」作業も必要です。
EC担当者さんの時給を計算してみてください。 本来なら、販促企画を練ったり、顧客対応をしたりすべき貴重な時間を、慣れない撮影作業で浪費してしまう。 結果的に、撮影にかかった人件費は、プロに依頼する費用の数倍に膨れ上がっていることがよくあります。 「社内でやる=タダ」ではありません。「見えない高コスト」が発生しているのです。
バレンタインは「失敗できない」。撮り直しがきかない季節性の怖さ
バレンタイン商戦は期間が短いです。 もし、苦労して撮った写真が「やっぱり微妙だね」となり、撮り直しになったら? Webへのアップが遅れれば、それだけ販売機会を損失します。 競合他社は、年明け早々から完璧なビジュアルで予約を開始しています。このスピード勝負の時期に、クオリティと納期の不安を抱えながら自社撮影を行うのは、経営リスクとも言えるのではないでしょうか。
経営的な正解は「使い分け」。目的に応じた最適な撮影サービスの選び方
私は、「全てを外注しろ」とは言いません。 SNSのストーリーズのような、リアルタイム性が求められる投稿は、スマホでサッと撮ってアップするのが正解です。 しかし、「売上を作るための本気の写真」は、プロに任せるのが最も合理的です。
弊社では、お客様の目的に合わせて2つのサービスを用意しています。これを賢く使い分けるのが、勝てるメーカーの戦略です。
【物撮り.jp】Amazon・楽天・カタログ向け。スペックを正確に伝える「白背景」の強み
まず、ECモール(Amazon、楽天市場など)の商品ページや、紙のカタログに載せる写真なら、迷わず「物撮り.jp」をご利用ください。
徹底的なコストパフォーマンス: 大量のSKUがある場合でも、1カットあたりの単価を抑えて依頼できます。
- 正確な色と質感: 商品のスペックを誤解なく伝えるための「白背景撮影」に特化しています。お客様の手元に届いた時に「写真と違う」というクレームを防ぐには、アーティスティックな写真よりも、忠実でクリアな写真が必要です。
- スピーディな納品: システム化された撮影フローにより、バレンタイン直前の駆け込みでも(状況によりますが)迅速に対応可能です。
「まずは商品をしっかり見せたい」「カタログ用の素材が大量に必要」という場合は、こちらが最適解です。
【フォトル】Instagram・LP・ギフト向け。ブランドの世界観を醸成する「演出写真」の魔力
一方で、Instagramのフィード投稿や、自社サイトのトップページ、ギフト特設LPのメインビジュアルには、「フォトル」を強く推します。
- ブランドイメージの確立: 「おしゃれ」「高級感」「温かみ」といった抽象的な要望を、プロのスタイリングとライティングで形にします。
- コンサルティング撮影: 単に撮るだけでなく、「どのような層に、どう訴求したいか」をヒアリングし、背景の素材選びから小物の配置まで、トータルでコーディネートします。
- 心に刺さるリッチコンテンツ: 先ほどお話しした「光のグラデーション」や「質感の対比」を駆使し、見た瞬間に「誰かに贈りたい」「自分へのご褒美にしたい」と思わせる、感情に訴えるビジュアルを制作します。
特にバレンタインは、味だけでなく「雰囲気」を買うイベントです。ここで妥協せず、世界観を作り込むことが、最終的な購入率(CVR)を劇的に変えます。
【まとめ】
- 失敗の原因: チョコレートが安っぽく見えるのは、光が硬すぎるから。「点」のハイライトはプラスチックに見える。
- プロの技: 光をディフューザーで2回拡散させ、斜め後ろから当てることで「高級なツヤ」が生まれる。
- スタイリング: おしゃれにするコツは「引き算」。マットな背景を選び、同系色でまとめること。
- 経営視点: 慣れない自社撮影は、担当者の時間を奪い、販売機会を逃すリスクがある。
- 使い分け: スペック重視のカタログ写真は「物撮り.jp」、ブランド訴求のイメージ写真は「フォトル」へ。
写真は、商品の「顔」です。特にECにおいて、お客様は写真を見て味を想像するしかありません。 最高の商品を作ったのなら、最高の「顔」を用意してあげてください。 撮影の悩みがあれば、いつでも篠原までご相談を。あなたの商品の本当の魅力を、私が引き出してみせます。

