【プロが解説】商品撮影ライティングの答え。アンブレラとソフトボックスの使い分け術

目次
結論:光の「拡散性」と「指向性」で使い分けるのが正解です
商品撮影で光をコントロールする機材、アンブレラとソフトボックス。
どちらを使えば良いか迷った時の結論からお伝えします。
それは、「ふんわりと広範囲を照らしたいならアンブレラ」、「狙った範囲に均一で綺麗な光を当てたいならソフトボックス」を選ぶのが正解です。
この2つの機材は、どちらもストロボの硬い光を柔らかくするための「ディフューザー」ですが、光の広がり方(拡散性)と、光が進む方向(指向性)に根本的な違いがあります。
この違いを理解するだけで、あなたの商品写真はプロのクオリティにぐっと近づきます。
私たち「物撮り.jp」では、撮影する商品に合わせてミリ単位でライティングを調整しますが、その基本にあるのは常にこの「光の特性」の理解です。
この記事では、年間数万カットの商品を撮影するプロの視点から、アンブレラとソフトボックスの具体的な使い分け術と、より一歩進んだテクニックまで詳しく解説します。
【プロの視点】アンブレラとソフトボックスの根本的な違い
なぜ、この2つを使い分ける必要があるのでしょうか?
それは、光の質が商品の見え方を大きく左右するからです。それぞれの機材が持つ、光の性質を詳しく見ていきましょう。
アンブレラの特徴:光を「拡散」させる傘
アンブレラは、その名の通り「傘」のような形状をしています。
ストロボの光を一度、傘の内側で反射させてから被写体に当てる(バウンスさせる)ことで、光を柔らかくします。
メリット
- 広範囲に光が回る: 光が大きく拡散するため、撮影スペース全体をふんわりと明るくすることができます。これにより、被写体全体に均一な光を当てやすく、自然で柔らかい影を生み出します。
- セッティングが簡単: 構造がシンプルなため、組み立てや片付けが非常にスピーディーです。
- 比較的安価: ソフトボックスに比べて価格が手頃なものが多く、導入しやすいのも魅力です。
デメリット
光のコントロールが難しい
光が広範囲に拡散する分、「ここにだけ光を当てたい」というような、意図した範囲外にも光が漏れやすいです。部屋の壁や天井にも光が反射し、余計な色かぶり(壁紙の色が商品に映り込むなど)の原因になることもあります。
アンブレラの特徴の1つとしては、被写体に光を当てた際の影の過ぎ方が柔らかいことです。
そのため、アパレル商品などで用いた際には自然なドレープが表現しやすい照明アクセサリーです。
ソフトボックスの特徴:光を「整え」て狙う箱
ソフトボックスは、内側が銀色の箱状になっており、前面にディフューザー(光を和らげる布)が張られています。
ストロボの光が箱の中で反射を繰り返しながら、前面のディフューザーを通過することで、均一で指向性の高い柔らかな光を作り出します。
メリット
- 光のコントロールが容易: 光が拡散しにくく、狙った場所に的確に光を当てることができます。これにより、商品の特定のディテールを際立たせたり、立体感を強調したりするライティングが可能です。
- 均一な面光源: 前面のディフューザー全体が均一に光るため、光沢のある商品への写り込みが非常に綺麗になります。
- アクセサリーが豊富: グリッド(光の拡散をさらに抑える格子状のアクセサリー)などを装着することで、より精密な光のコントロールができます。
デメリット
- セッティングに手間がかかる: 構造が複雑なものが多く、組み立てや分解に時間がかかる場合があります。
- 比較的高価: アンブレラに比べると価格帯は高めです。
物撮り.jp流!実践的な使い分け術
理論がわかったところで、次は「具体的にどんな商品にどちらを使うのか?」という実践的な使い分け術を、物撮り.jpでの撮影事例を交えてご紹介します。
こんな商品には「アンブレラ」がおすすめ
光を全体にふんわりと回したい、柔らかく優しい雰囲気を演出したい場合にアンブレラは最適です。
- アパレル製品(Tシャツ、セーターなど)
- 衣類全体の質感や色味を自然に見せたい場合に有効です。大きなアンブレラを使えば、モデルが着用した状態でも全身をムラなく照らすことができます。
- ぬいぐるみやタオルなど、柔らかい素材のもの
- 素材の「ふわふわ感」や「柔らかさ」を表現するのに、アンブレラの優しい光は非常に効果的です。影が強く出すぎず、温かみのある印象に仕上がります。
- 複数商品を集合させて撮影する場合
- たくさんの商品を一度に撮影する際、ソフトボックスでは光が届く範囲が限られてしまいます。アンブレラなら、広範囲をカバーできるため、全体を均一に明るく写すことができます。
【物撮り.jpの経験談】
以前、ベビー用品のギフトセットを撮影した際、最初はソフトボックスでライティングを組みました。
しかし、各商品の質感をくっきり見せようとするあまり、影が強くなりすぎてしまい、ベビー用品特有の「優しさ」や「温もり」が表現できませんでした。
そこで、メインライトを大きなアンブレラに切り替え、全体を包み込むような光にしたところ、お客様が求める温かみのある雰囲気を出すことに成功した経験があります。
こんな商品には「ソフトボックス」がおすすめ
商品の輪郭やディテールをはっきりと見せたい、高級感を演出したい場合にはソフトボックスが活躍します。
- 化粧品やボトル類
- ボトルの形状やラベルの質感を正確に表現するのに最適です。特に、側面にハイライトを綺麗に入れる「エッジライト」を作る際に、指向性の高いソフトボックスは欠かせません。
- 宝飾品、腕時計、電子機器など光沢のあるもの
- ソフトボックスの均一な面光源は、金属やガラスへの「写り込み」を美しく見せることができます。被写体に四角い光が綺麗に写り込むことで、製品の高級感を際立たせます。
- 食品(特にシズル感を出したい料理)
- 料理のツヤやテリといった「シズル感」は、狙った場所にハイライトを入れることで生まれます。ソフトボックスを使えば、湯気やソースの光沢だけを的確に照らし出し、美味しそうな瞬間を切り取ることが可能です。
【物撮り.jpの独自ノウハウ】
これは弊社の独自ノウハウの一つですが、光沢の強い腕時計の撮影では、ソフトボックスに「グリッド」を装着することが必須です。
以前、グリッドなしのソフトボックスで撮影した際、光がわずかに拡散してしまい、文字盤の繊細なギョーシェ彫り(模様)が飛んでしまいました。
そこでグリッドを装着し、光の範囲を文字盤だけに絞ったところ、模様の凹凸と金属の輝きを両立させることに成功しました。このように、物撮り.jpでは商品の特性に合わせて機材を細かくカスタマイズしています。
なぜプロは両方持っているのか?応用テクニックを紹介
プロの現場では、アンブレラかソフトボックスか、どちらか一方だけを使うことは稀です。多くの場合、これらを組み合わせて理想の光を作り出します。
複数ライトでの組み合わせ術
例えば、以下のような組み合わせが考えられます。
- メインライト(キーライト)にソフトボックスを使用: 商品の形や質感を決定づける最も重要な光です。狙った場所に的確に当てられるソフトボックスを使い、商品の立体感を引き出します。
- 補助光(フィルライト)にアンブレラを使用: メインライトによってできた影を和らげるための光です。アンブレラを使い、撮影空間全体をほんのり明るくすることで、影の部分が真っ黒になるのを防ぎ、自然な明るさの階調を作ります。
このように、指向性の強い光と、拡散性の高い光を組み合わせることで、単一のライトでは表現できない、より深みのあるライティングが可能になります。
「光を引く」ための黒い板
プロの現場では、光を「足す」だけでなく、「引く」ことも重要視します。
黒い画用紙や板(通称「黒ケント」や「黒締め」)を商品の脇に置くことで、余計な光の反射を吸収し、輪郭を引き締める効果があります。
特に、白い背景で白い商品を撮影する際など、境界が曖昧になりがちなシーンでこのテクニックは絶大な効果を発揮します。
撮影でお悩みなら、物撮り.jpにご相談ください
この記事では、プロの視点からアンブレラとソフトボックスの使い分けについて解説しました。
ライティングは非常に奥が深く、商品の魅力を最大限に引き出すには、豊富な知識と経験が必要です。
「自分で試してみたけど、どうしてもうまくいかない」 「もっと商品の魅力を伝えられる写真が欲しい」
もし、あなたが商品撮影でお悩みなら、ぜひ私たち「物撮り.jp」にご相談ください。
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